第91話

文字数 940文字

「こうなったら先手必勝!」
 そう叫んだミランは傾いている部長の首をめがけて突っ込んでいた。
 ミランの槍は部長の首をかすめた。その傷口から黒い液体がドロリと流れ出た。
「やった!出てきましたね」
 続いて深雪から出てきたマノコがその黒い液体に剣を突き立てた。しかし、力が弱いのかその剣は黒い液体に弾き返される。
「くそっ」
 何度も剣を突き立てるが全く歯がたたない。鋼鉄の液体はどんどん部長の首から流れ出てくる。ミランも参戦し、槍を突き立てたがこれも弾き返される。黒い液体は部長の肩から胸辺りを覆いはじめていた。
「鬱陶しいわ!」
 部長が叫びながら、ミラン達を手で払いのけた。
「きゃー!」
 そのあまりにもパワフルな一撃で、ミラン達は店内に弾き出された。すぐに態勢を整えるも、この圧倒的なパワーになすすべもない。
 部長は一歩ずつクロークから出てくる。部長の足が完全に敷居をまたいだ。全身が店内に出てきた時、部長は雄叫びをあげた。
「ハァーアーダーァァァッ!」
 部長の顔や、あらゆる関節から黒いモヤが噴き出した。
 猛烈な衝撃波が店内の空気を震えさせた。その衝撃波は店の奥から表へと拡散していった。
 棚は揺れ傾き、箱物はバラバラと落下した。綺麗に重ねられていたカップ麺は崩れ落ち、牛乳などの紙パックは裂け、ペットボトルの蓋は圧力に耐えかねて弾け飛んだ。
「ふう。やっと出たぞ。この瞬間を待っていた」
 静かに重たい声で話す声はもはや部長の声ではなかった。
 何とかガード姿勢が間に合ったミラン達はそれでも店のガラス付近まで吹き飛ばされていた。
「くそ、このままではやられてしまいます」
 ちょうど亮介達は自動ドアを抜けようとしていた。
 店の奥の方では部長がケダモノのような呻き声を上げながら店内を暴れまわっている。
「くっ、こんな時はどうすればいいのでしょう」
 暴れまわる部長と目があった。ピタッと部長の動きが止まったが、次の瞬間ミラン達に向かって猛烈なスピードで駆け寄って来る。
「グィワーッ」
 言葉にならない叫びが近づく。考えている余裕などなかった。
「一旦退散です」
 ミラン達は自動ドアまで浮遊していき、亮介達の後に続いてスーパーマルカツから出ていった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み