第45話

文字数 904文字

「うん。わかってる。私もさっきから凄く興奮している。この近辺にマノコがいる。早く慶長さんに連絡しなきゃ。」
 深雪が携帯を取り出そうと、スカートのポケットに手を入れた時、亮介の体に悪寒が走った。
 三人は数珠で、亮介は体調不良でマノコを検知するようだ。
 まただ。亮介の体調は益々悪くなっていく。全身の産毛が逆立ち、その一本一本が棘のように突き刺さり亮介の全身を痛みが襲う。血液は煮えたぎっているように熱く、あらゆる内臓はそれぞれで鼓動を始めたような息苦しさがある。
 亮介はまたもや立っていられることができず、その場に座り込んでしまった。
 その時、商品棚に手が引っかかり派手に倒してしまった。
 店内が騒然とする。品出しをしていた店員が駆け寄ってくる。
 床に散らばるガムや飴。亮介はその中から異様なモヤがかかっているパッケージを見つけた。
 それは「甘露、みかん飴」とあり、みかんの断面図がパッケージの半分を占めているオレンジ色のものだった。
 確かにそのほかの「甘露、みかん飴」は鮮やかなオレンジ色なのだが、その一つだけは黒いベールを被せたようにくすんでいた。
「あ、あ、れ」
 亮介は、苦痛に痛む身体で精一杯その飴を指差した。
「ん?あの飴が怪しいの?」
 深雪が亮介の指先にある飴を見つけた。
「あ、あれが、マノコ。早くそれを買って外へ。」
 亮介は声を出すのも精一杯だった。
「わかった。とにかく、あの飴ね。」
 そう言うと深雪は残ったブッケンの二人に棚の片づけを言い問題の「甘露、みかん飴」を持ってレジに向かった。
 亮介もふらつく足元で何とか深雪の後を追う。
 精算を済まし、外に出た二人は表の自転車置き場についた。
 地面に飴を置き、深雪は携帯を取り出し慶長の番号を押した。
 亮介はその場に座り込んでいた。体調はますます悪化していく。全身の体毛が亮介の皮膚に突き刺さる。血は煮あがり全身を猛スピードで駆け巡る。激しい頭痛、胃の中のものがせりあがってくるような吐き気。激しい動悸。浅くなる呼吸。あらゆる全身症状が亮介を襲う。亮介の頭の中は朦朧とし、意識は遥かかなたに飛びそうになっていた。
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