第17話

文字数 640文字

 亮介が寝ていた布団は綺麗に片付けられていた。
「ところで、変な夢を見ていたのだけど」
「ほう。なんですか?そのような破廉恥な夢の話は聞きたくないですが。」
「いやいや生理現象だし、アンタも男ならわかるだろうが!これからする話は真面目な話じゃ!」
 亮介は慶長の横に座った。
 板の間はヒンヤリとしていて、胡座をかいた足が少し痛みそうだった。
 亮介は慶長を見て、慶長は本尊の薬師如来像をみている。
「んで、どんな夢だったのですかな?人の話を聞くのも僧侶の大切な仕事でございます」
 亮介はあの儀式から瞑想状態に入り、森の中のこと、光の輪のこと、突然現れた女性のこと、その女性が言っていたことなど、不思議な、でも現実感があって、多幸感に包まれたことなどを話した。
 慶長はじっと亮介の話に耳を傾けていた。
 亮介が話終わり、しばらく慶長は長く考え事をしているように静寂が漂った。
「うーん、それはきっと」
 慶長がゆっくりと言葉を選びながら話し出した。
「あなたは選ばれたのですね」
「誰に?何目的で?」
「これは、少し長い話になりそうです。いえ、話はいたってシンプルなんですが、亮介さんが受け入れるのには少し時間がかかるかもしれません」
「そんな大それたことなのか?」
「こちらへどうぞ」
 そう言うと慶長は立ち上がり、歩き出した。
 亮介はその後ろをゆっくりとついていった。
 薬師如来像の後ろ、本堂の裏手に当たる観音開きの扉は、広く開け放たれ、外の光が一直線に刺していた。
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