挑戦!戦闘クエスト -7-

文字数 1,345文字

 荒野が終わり草原になろうかというとき、「クリーチャーが現れた!」のガイドが表示され、コージは戦闘態勢をとった。足元を警戒していたコージの不意を突き、敵は空からやってきた。アイバットという名のそいつは、丸い身体のほとんどが目玉になっている一つ目の蝙蝠のような姿をしていた。中途半端な高さを飛び回っていて、剣が届かない。そうかと思うと、急降下して翼でパチパチ叩いてくる。
「くそっ! 苛々すんな!」
 ダメージは無いが、鬱陶しいことこの上ない。向かってきたタイミングで切り落としてやろうと剣を構えた。コージの姿が映る巨大な瞳が光った刹那、目から火球が飛んできた。
「危ね!」
 火球は地面に落ち、周りの草を焼き尽くして黒い焦げを残した。翼で叩くしか能がない蝙蝠かと思って油断していた。さすがにあんなものを食らったら無事では済まない。打つ手がないコージをあざ笑うかのように、アイバットは火球を連射してくる。速度はそこまで早くないので避けられるが、このままではジリ貧だ。なんとか反撃の手段を考えなければ、防戦一方になってしまう。何か飛び道具があれば……。
 ルミナティソードから鼓動が伝わった……ような気がした。コージは剣を見る。ガーネットが光る。この時、コージはルミナティソードが何を伝えようとしているのかが分かった気がした。
「よし……」
 剣を両手持ちして息を吐く。後は、タイミングだ。アイバットの目が光る。……来る!
 コージは素早く左に移動して火球の進行方向からずれ、そして右脚を一歩引いて体重を移す。火球が横を通り過ぎようとした瞬間に思いっきりスイングした。ルミナティソードの刀身に当たり、火球は真っすぐにアイバットに向かっていった。ホームランだ。
 まさか撥ね返されるとは思わなかったのだろう、慌てて避けようとするも間に合わず、翼に当たって惨めに落下した。地面に落ちたセミのようにバタバタしているところに、ルミナティソードを突き立ててケリを付けた。「戦闘に勝利した!」のガイドが流れた。
「何とか勝てた……。ありがとな」
 剣に声をかける。あの時、ルミナティソードに言われた気がしたのだ。火球など、バッターになったつもりで打ち返してしまえ、と。打開策を与えてくれた戦友への礼だった。例のごとく手に入れた金額と経験値の情報が流れた後、「レベルが上がりました!」の表示。経験値を得てレベルアップしたようだ。久々にプロフィールの詳細を見てみる。

名前――コージ
称号――駆け出しバッター戦士
職業――戦士
所持金――¥540
Lv――5
経験値――2,100
体力――80/80
ステータス――正常

 称号が「駆け出しバッター戦士」になったことには、もうツッコまずにおこう。今の自分のレベルに合った弱い敵を倒しているからか、所持金がなかなか増えない。クリーチャー討伐の報酬額が内職のそれと変わらない。レベルを上げてしまえば、強い敵と闘えるようになり、得られる報酬も増えるだろうか。
 そんなことを思っていると、また戦闘が開始された。今度はグリーンワームとアイバットが同時に現れた。一人で二体を相手にしないといけない。ルナの中はゲーム性を持ちながら、戦闘についてはリアルで、ゲームのようなターン制ではない。同時に攻撃を仕掛けられる。
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