挑戦!戦闘クエスト -8-

文字数 1,661文字

 グリーンワームの噛みつき攻撃を躱したところに、アイバットの火球が飛んできてコージの背中に直撃した。不思議と痛みや熱さはなかったが、衝撃は伝わってきた。ガイドが表示され、「体力 75/80」となったのが見えた。大きくはないが、ダメージを負ってしまった。体力表示に気を取られている隙を突かれ、今度はグリーンワームの体当たりを受けてしまった。体力が72になった。
 焦りが隙を作り、敵からの攻撃を被弾し、さらに焦る。悪い流れができてしまっている。このままでは、いずれやられる。落ち着きたいが、落ち着く暇など与えてくれない。また火球が飛んできた。
「くそっ」
 コージは思い切り走った。いったん距離を取らないと、考える余裕すらない。幸いグリーンワームの速度は大したことないので振り切ることもできる。問題はアイバットだ。こちらの攻撃が届かない空から火球を放ってくるので、どうしても防戦になる。走るコージの横を火球が掠める。走るのを止め、振り返って剣を構える。アイバットがバサバサと向かってきている。目が光り、火球が放たれたのを確認し、軌道から逸れて構える。タイミングを見計らって思いっきりスイングし、狙い通り火球を撥ね返した。
「よし!」
 火球が当たって地に落ちてしまえばこっちのものだ。だが、アイバットは再び火球を発射し、撥ね返された火球と衝突し、小さな爆発を起こしただけで終わってしまった。同じ手は通用しなかった。それどころか、呆然とするコージに追い打ちをかけるように火球を出してきた。
「マジかよ……!」
 慌てて飛びのいて攻撃を避けた。さっきまでコージがいた場所が黒焦げになった。アイバットが目を大きくし、また攻撃態勢に入る。
『ギャギャー!』
 さらに悪いことに、グリーンワームが追いついてきてしまった。アイバットの火球と、グリーンワームの体当たりが同時に襲う。こうなったら、多少の被弾は覚悟で倒せる方から倒すしかない。コージはアイワームに向かって駆け、体当たりを躱して腹を横一文字に切り裂いた。さらに、アイバットの放った火球が偶然にもグリーンワームにヒットし、グリーンワームは息絶えて消えていった。
「っしゃ!」
 これで一対一だ。相変わらず攻撃手段が無いが、アイバットに集中できる。剣を構えなおしたその時、グリーンワームの消滅跡に宝箱が現れた。勝手に開いて何かが出てきた。そして「コージは魔法の吹き矢を手に入れた!」のガイド表示。グリーンワームは宝箱を持っていたのだ。しかも中身は吹き矢。この場面での飛び道具は願っても無い。コージは急いで魔法の吹き矢を拾い上げた。
 アイバットの火球を躱し、吹き矢を向ける。経験などないが、やってやる。吹き矢の先とアイバットを見ると、筒先が二重に見える。二重に見える筒先の真ん中に標的のアイバットを合わせる。照準を合わせた後は深く息を吸い、そして一気に吐き出した。
 バチッという音と共に、吹き矢の先から目にも止まらぬ速さで雷のような青白い矢が飛び出し、空気を切り裂いていった。躱す動きをする間もなく矢は直撃し、アイバットは消し炭になって消えていった。
「やった……」
 コージはへたり込んだ。一時は同時攻撃に嵌められそうになったが、どうにか二対一の勝負に勝利したことで張りつめていた緊張が解けた。肉体的には疲労もダメージも大きくないが、精神的に疲れた闘いだった。だが、闘った甲斐はあった。便利な道具を手に入れたお陰で、空中からの刺客にも対処できるようになる。左手で握っている吹き矢に感謝した。
 それからはコージの時間だった。何度もクリーチャーに遭遇しては倒しての繰り返し。敵が同時に現れても問題なく倒しきれるようになった。グリーンワームはルミナティソードで、アイバットは吹き矢で一撃で退治できた。合わせて三十匹は倒しただろうかというところで、プロフィールを確認してみる。

名前――コージ
称号――ひよっこ戦士
職業――戦士
所持金――¥2,600
Lv――7
経験値――4,350
体力――108/108
ステータス――正常
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み