チュートリアル -2-
文字数 1,300文字
『この中から選んでもいいし、体型や顔を細かく指定してオリジナルキャラを作ることもできるよ! コージはどんな姿になるのかなー? 私楽しみ!』
イケメンと少年とイケオジが銘々にアピールする中、晃司は自宅に居ながら場違いな気分を味わっていた。モデルが並ぶステージの上に、普通のアラサーが迷い込んだのと変わらない。三者とも今の自分とかけ離れていて、誰を選んでも恥ずかしい。試しに、彼らを自分に重ねてもみたが。腕を組んでも決まらない。笑顔でピースしたら痛々しい。顎に手を当てても渋くはならず、中二病を引き摺って大きくなったような残念なイメージにしかならなかった。
「俺はこのままの姿でいい……」
キャラクター達が消え、セレーナが確認する。
『コージは今のままでも素敵だから、それもいいかもね! じゃあ、今の姿をアバターにしちゃっていい?』
適当な慰めは、却って人を傷つけるものだと言ってやりたい。晃司は嘆息して頷いた。
『オッケー! それじゃ、ニックネームとアバター決定だね!』
拍手する彼女。晃司との温度差は開く一方だ。
『じゃあ、ルナで過ごす上で知っておいてほしいことを説明するね! もし忘れちゃっても、また教えてあげるから心配しないでね! 最初に、ルナを始めるときの大切な話。いまコージはアバターになってルナの中にいるけど、本物のコージは眠っている状態なんだ。だから、ルナを始めるときは必ず安全なところにいてね』
おいおい。もう始まってるのに、今更それを言うか。確かに、説明書にもそんな事が書いてあったとは思うが。
『お外でやっちゃだめだよ。道路の真ん中で寝ちゃったら、車に轢かれちゃうよ』
人を迷惑系動画投稿者みたいに言うな。あんな装置を付けた状態で外を出歩くのだって恥ずかしいってのに。
『次に、ルナから帰る方法を教えるね! コージの左腕に付いている装置を見てみて。あ、ちなみにアームヘルパーって言うんだよ! アームヘルパーのボタン押してみてくれるかな?』
晃司は言われたとおりにボタンを押した。すると、短い効果音とともに、視界の左端の空間にRPGゲームでよく見るメニューパネルが現れた。どうやら、アームヘルパーのボタンはメニューパネルを開くためのもののようだ。ボタンが縦に四つ並んでいて、一つ目から三つ目は非活性になっている。ボタン内は「?」マークが書かれてあるだけで、内容が分からない。四つ目は「設定」と書かれていて、押せそうなデザインになっている。
『メニューが出てきたよね? 設定っていうボタンを押してみて?』
触れればよいのだろうか? 晃司は設定のボタンに手を伸ばした。ゲーム機と違って、ホログラムのように空間に表示される映像は遠近感がつかめない。文字通り手探りしていると、あるところで指に何かに触れた感触があった。それと同時に、設定ボタンの色が変わり、ボタンを押しているようなデザインになった。晃司が驚いて手を引っ込めると、パネルの内容が変わった。
ボタンを押せたらしい。まさか、エアタッチではなく、本当にボタンを押す感触まであるとは。ボタンが空間にあるというだけで、タッチパネルを操作している感覚だ。
イケメンと少年とイケオジが銘々にアピールする中、晃司は自宅に居ながら場違いな気分を味わっていた。モデルが並ぶステージの上に、普通のアラサーが迷い込んだのと変わらない。三者とも今の自分とかけ離れていて、誰を選んでも恥ずかしい。試しに、彼らを自分に重ねてもみたが。腕を組んでも決まらない。笑顔でピースしたら痛々しい。顎に手を当てても渋くはならず、中二病を引き摺って大きくなったような残念なイメージにしかならなかった。
「俺はこのままの姿でいい……」
キャラクター達が消え、セレーナが確認する。
『コージは今のままでも素敵だから、それもいいかもね! じゃあ、今の姿をアバターにしちゃっていい?』
適当な慰めは、却って人を傷つけるものだと言ってやりたい。晃司は嘆息して頷いた。
『オッケー! それじゃ、ニックネームとアバター決定だね!』
拍手する彼女。晃司との温度差は開く一方だ。
『じゃあ、ルナで過ごす上で知っておいてほしいことを説明するね! もし忘れちゃっても、また教えてあげるから心配しないでね! 最初に、ルナを始めるときの大切な話。いまコージはアバターになってルナの中にいるけど、本物のコージは眠っている状態なんだ。だから、ルナを始めるときは必ず安全なところにいてね』
おいおい。もう始まってるのに、今更それを言うか。確かに、説明書にもそんな事が書いてあったとは思うが。
『お外でやっちゃだめだよ。道路の真ん中で寝ちゃったら、車に轢かれちゃうよ』
人を迷惑系動画投稿者みたいに言うな。あんな装置を付けた状態で外を出歩くのだって恥ずかしいってのに。
『次に、ルナから帰る方法を教えるね! コージの左腕に付いている装置を見てみて。あ、ちなみにアームヘルパーって言うんだよ! アームヘルパーのボタン押してみてくれるかな?』
晃司は言われたとおりにボタンを押した。すると、短い効果音とともに、視界の左端の空間にRPGゲームでよく見るメニューパネルが現れた。どうやら、アームヘルパーのボタンはメニューパネルを開くためのもののようだ。ボタンが縦に四つ並んでいて、一つ目から三つ目は非活性になっている。ボタン内は「?」マークが書かれてあるだけで、内容が分からない。四つ目は「設定」と書かれていて、押せそうなデザインになっている。
『メニューが出てきたよね? 設定っていうボタンを押してみて?』
触れればよいのだろうか? 晃司は設定のボタンに手を伸ばした。ゲーム機と違って、ホログラムのように空間に表示される映像は遠近感がつかめない。文字通り手探りしていると、あるところで指に何かに触れた感触があった。それと同時に、設定ボタンの色が変わり、ボタンを押しているようなデザインになった。晃司が驚いて手を引っ込めると、パネルの内容が変わった。
ボタンを押せたらしい。まさか、エアタッチではなく、本当にボタンを押す感触まであるとは。ボタンが空間にあるというだけで、タッチパネルを操作している感覚だ。