はじめてのボス戦 -10-
文字数 1,650文字
「危機一髪だったな……。フミトがいてくれなかったら、どうなったことか」
「お互い様っす! オレ一人いても、あいつを倒せなかったっすもん」
「またアイテムが俺のになっちゃったんだが……」
「いいっすよ! パーティなんだし、誰が持ってるかの違いっしょ! というか、今のアイテムは何か持ちたくないし」
手に入れた本人を目の前に何と言うことを。俺だって持ちたくないわ、と言ってやりたかったコージだったが、それよりも服に着いたヘドロの臭いがきつくて息を止めたため、思っただけになった。コテツからの餞別で装備は二着貰っていたので、大急ぎで代えのものに着替える。
「それにしても、さっきの技、すごかったっすね!」
「何か有効打が無いかを結界の中で確認していたら、今の技を覚えていたんだ」
「土壇場で何とかしちゃうコージさんはすげーっすね! 身体は大丈夫っすか? 前にオレに買ってくれた回復薬使います? 全快はしてなかったでしょ?」
「ああ、確か七割か八割くらいの体力だったはず……」
フミトは自分が持っていた回復薬を取り出し、コージに勧めた。しかし、コージは受け取らずに自分のプロフィールを不思議そうに眺めている。
「どうかしました?」
「満タンなんだ」
「満タン? 何がっすか?」
「体力。さっきは間違いなく満タンじゃなかったんだ。今見たら、全回復してる」
「え? マジっすか!? ……本当だ」
フミトもコージのプロフィールを覗いてみたところ、確かに満タンになっていた。戦士のコージに回復スキルなどないし、どうしてかと唸っていたが。
「コージさん」
呆れた様子のフミトが、自分のパネルを見せてきた。
「……コージさんの持ってるルミナティソードに超便利なスキル付いてるじゃないっすか」
――――――――――――――――――――
ルミナティソード
スキル:アブソープション
倒した敵の体力を吸収する
――――――――――――――――――――
「本当だな……。そう言えば、萬屋のコテツさんが、倒した相手の体力を吸い取るとか言ってたような気が……」
あの時は剣を受け取る代償の方に気が行ってしまって、細かい説明は頭の外だった。
「コージさん、自分の武器の説明を見たことは?」
「無い……」
「ある意味、尊敬します……」
そんなに残念そうにしないでくれ。こんな最先端の技術にはオッサンは簡単に付いていけないんだ。セレーナも説明してくれたら良かったのに……と他責思考になってしまったので、コージはイカンイカンと首を振った。
「今後はちゃんと確認します……」
「何はともあれ、体力満タンで良かったっす。あー、コージさん死んじゃうかと思ってビビったあ~」
「俺もだ。フミトのお陰で助かった。ステータス異常は気を付けないと」
「街に戻ったら、アイテムを買い込んでおかないと」
「薬屋に行ったらドン引きすると思うけど、気にするなよ」
「?」
「あと、薬を買うならお菓子は控えめに」
「毒を消せるお菓子ないっすかね」
「子供か」
こんな会話ができるのも、フミトのサポートがあったからこそだ。コージは態度と言葉で礼を伝えた。できれば伝わってほしい。二人は採取の続きを行った。最後までニオイに慣れることは無かったが、十ヵ所からの採取が完了した。あとは水質研究所に持っていくだけだ。
「それじゃ、早く草原に戻ろう。ここにはもう居たくない」
「超賛成っす」
ほとんど走るくらいの速度で、アラハド草原まで戻った。悪臭の根源からは遠ざかったはずだが、何となくまだクサイ臭いがする気がした。コージが子供の頃、父親が出てきたばかりのトイレに、姉が用量オーバーだろうというくらいに消臭剤を撒いていたのを、ふと思い出した。思い出して、なんだか悲しくなった。
「コージさんどうかしました? 思春期の娘から”お父さんの服と一緒に洗濯しないで!”って言われた父親みたいな顔っすよ」
「まさにその顔してるところだから、できれば察してくれ」
勘が良いのにデリカシーがないというのは厄介だ。お前もあと十年もすれば嫌でも分かることになるさ。
「お互い様っす! オレ一人いても、あいつを倒せなかったっすもん」
「またアイテムが俺のになっちゃったんだが……」
「いいっすよ! パーティなんだし、誰が持ってるかの違いっしょ! というか、今のアイテムは何か持ちたくないし」
手に入れた本人を目の前に何と言うことを。俺だって持ちたくないわ、と言ってやりたかったコージだったが、それよりも服に着いたヘドロの臭いがきつくて息を止めたため、思っただけになった。コテツからの餞別で装備は二着貰っていたので、大急ぎで代えのものに着替える。
「それにしても、さっきの技、すごかったっすね!」
「何か有効打が無いかを結界の中で確認していたら、今の技を覚えていたんだ」
「土壇場で何とかしちゃうコージさんはすげーっすね! 身体は大丈夫っすか? 前にオレに買ってくれた回復薬使います? 全快はしてなかったでしょ?」
「ああ、確か七割か八割くらいの体力だったはず……」
フミトは自分が持っていた回復薬を取り出し、コージに勧めた。しかし、コージは受け取らずに自分のプロフィールを不思議そうに眺めている。
「どうかしました?」
「満タンなんだ」
「満タン? 何がっすか?」
「体力。さっきは間違いなく満タンじゃなかったんだ。今見たら、全回復してる」
「え? マジっすか!? ……本当だ」
フミトもコージのプロフィールを覗いてみたところ、確かに満タンになっていた。戦士のコージに回復スキルなどないし、どうしてかと唸っていたが。
「コージさん」
呆れた様子のフミトが、自分のパネルを見せてきた。
「……コージさんの持ってるルミナティソードに超便利なスキル付いてるじゃないっすか」
――――――――――――――――――――
ルミナティソード
スキル:アブソープション
倒した敵の体力を吸収する
――――――――――――――――――――
「本当だな……。そう言えば、萬屋のコテツさんが、倒した相手の体力を吸い取るとか言ってたような気が……」
あの時は剣を受け取る代償の方に気が行ってしまって、細かい説明は頭の外だった。
「コージさん、自分の武器の説明を見たことは?」
「無い……」
「ある意味、尊敬します……」
そんなに残念そうにしないでくれ。こんな最先端の技術にはオッサンは簡単に付いていけないんだ。セレーナも説明してくれたら良かったのに……と他責思考になってしまったので、コージはイカンイカンと首を振った。
「今後はちゃんと確認します……」
「何はともあれ、体力満タンで良かったっす。あー、コージさん死んじゃうかと思ってビビったあ~」
「俺もだ。フミトのお陰で助かった。ステータス異常は気を付けないと」
「街に戻ったら、アイテムを買い込んでおかないと」
「薬屋に行ったらドン引きすると思うけど、気にするなよ」
「?」
「あと、薬を買うならお菓子は控えめに」
「毒を消せるお菓子ないっすかね」
「子供か」
こんな会話ができるのも、フミトのサポートがあったからこそだ。コージは態度と言葉で礼を伝えた。できれば伝わってほしい。二人は採取の続きを行った。最後までニオイに慣れることは無かったが、十ヵ所からの採取が完了した。あとは水質研究所に持っていくだけだ。
「それじゃ、早く草原に戻ろう。ここにはもう居たくない」
「超賛成っす」
ほとんど走るくらいの速度で、アラハド草原まで戻った。悪臭の根源からは遠ざかったはずだが、何となくまだクサイ臭いがする気がした。コージが子供の頃、父親が出てきたばかりのトイレに、姉が用量オーバーだろうというくらいに消臭剤を撒いていたのを、ふと思い出した。思い出して、なんだか悲しくなった。
「コージさんどうかしました? 思春期の娘から”お父さんの服と一緒に洗濯しないで!”って言われた父親みたいな顔っすよ」
「まさにその顔してるところだから、できれば察してくれ」
勘が良いのにデリカシーがないというのは厄介だ。お前もあと十年もすれば嫌でも分かることになるさ。