はじめてのボス戦 -2-
文字数 1,398文字
踵を返そうとしたその時、ガイドが表示された。「フミトから着信中です」となっている。その下に、「応答」と「拒否」のボタンがある。電話のようだ。こんな機能まであるとは。コージは「応答」を押した。
(あ! コージさん! おはようーっす!)
朝から元気な挨拶で感心だ。それにしても、電話機も無ければイヤフォンもしていないのに、まるで電話で通話しているような感覚だ。
「おはよう。電話なんてできるんだな。知らなかったよ」
(オレも昨日知ったんすよ! お互い別行動することだってあるし、コージさんと連絡とる方法ねえかなって思って、セレーネ呼んでいろいろ訊いたんす。そしたら電話の機能を教えてくれたんすよ!)
セレーネ。ルナに初めてログインしたときに、ルナの説明をして、アカウント設定を手伝ってくれた案内人だ。あいつ、呼べるのか。そういえば、別れ際に、名前を呼んだら駆けつける的なことを言っていたような気もする。
(又五郎さんに、コージさんがこっちに来てたって聞いたんで、連絡してみました! コージさん、いまどこに居ます?)
「街だよ。ちょうどよかった、フミトに相談したいことがあるんだ」
今しがた掲示板で見たクエストの件を伝えた。フミトが反対するようなら受注しないつもり……だったのだが。
(主!? 何すかそれー! 盛り上がってきたじゃないすかー!)
ハイテンションフミトになった。どうやら乗り気のようだ。
「受注していいか?」
(もちろんっす! 確認したら、オレのレベルは11なんで、戦闘クエスト受けられます! 両方受けて稼ぎましょ! オレも今から街に行きます!)
「街の掲示板の場所は分かる? そこにいるんだけど」
(分かるっす! それじゃ、ちょっと待っててください!)
「オッケー。近くに停留所があって、バスに乗ったら近くで降ろしてくれる……」
コージが言い終わらないうちに、目の前に突然人型の光が現れ、
「お待たせっす!」
「え?」
「瞬間移動してきちゃいましたっ」
フミトがVサインを向けてきたのだった。
「コージさん驚きすぎっすよ!」
「いや、驚かないわけないだろ……。どうやって来たんだ?」
「瞬間移動っす! パーティを組むと、離れていても一瞬で合流できるんす! これもセレーネから聞きました!」
「まじか……」
だんだん現実離れな仕様が明るみになってくるな。現実じゃないんだから、何でもありといえばありなのだろうが。どうやったのだろう。
「コーディネイト・コージ!」
フミトが呪文のような言葉を発した瞬間、フミトの姿が光となってコージの目の前に移動し、やがて光は再びフミトの姿となった。
「こう言えば、相手の目の前に瞬間移動できるらしいっすよ!」
「すげえ……」
バスで移動してきた自分が何だか馬鹿みたいに思えてくる。それはそうと、試してみたい。いい歳して恥ずかしくないのかと言われそうだが、試してみたい。
「コーディネイト・フミト」
恥を忍んで呟いてみた。そして、何も起こらなかった。
「……」
「あれ? 何も起きないっすね。オレはこの距離にいても数センチだけ瞬間移動したのに」
恥ずかしい。三十路のおっさんが呪文を唱えて、しかも何も起きないというのは、恥に恥を重ねたみたいで居たたまれない。頭を抱えて座り込んだコージを、誰が責められようか。
「あははは! コージさんかわいい~」
フミトに大笑いされる始末だ。頼むから何も言わないでくれ。
(あ! コージさん! おはようーっす!)
朝から元気な挨拶で感心だ。それにしても、電話機も無ければイヤフォンもしていないのに、まるで電話で通話しているような感覚だ。
「おはよう。電話なんてできるんだな。知らなかったよ」
(オレも昨日知ったんすよ! お互い別行動することだってあるし、コージさんと連絡とる方法ねえかなって思って、セレーネ呼んでいろいろ訊いたんす。そしたら電話の機能を教えてくれたんすよ!)
セレーネ。ルナに初めてログインしたときに、ルナの説明をして、アカウント設定を手伝ってくれた案内人だ。あいつ、呼べるのか。そういえば、別れ際に、名前を呼んだら駆けつける的なことを言っていたような気もする。
(又五郎さんに、コージさんがこっちに来てたって聞いたんで、連絡してみました! コージさん、いまどこに居ます?)
「街だよ。ちょうどよかった、フミトに相談したいことがあるんだ」
今しがた掲示板で見たクエストの件を伝えた。フミトが反対するようなら受注しないつもり……だったのだが。
(主!? 何すかそれー! 盛り上がってきたじゃないすかー!)
ハイテンションフミトになった。どうやら乗り気のようだ。
「受注していいか?」
(もちろんっす! 確認したら、オレのレベルは11なんで、戦闘クエスト受けられます! 両方受けて稼ぎましょ! オレも今から街に行きます!)
「街の掲示板の場所は分かる? そこにいるんだけど」
(分かるっす! それじゃ、ちょっと待っててください!)
「オッケー。近くに停留所があって、バスに乗ったら近くで降ろしてくれる……」
コージが言い終わらないうちに、目の前に突然人型の光が現れ、
「お待たせっす!」
「え?」
「瞬間移動してきちゃいましたっ」
フミトがVサインを向けてきたのだった。
「コージさん驚きすぎっすよ!」
「いや、驚かないわけないだろ……。どうやって来たんだ?」
「瞬間移動っす! パーティを組むと、離れていても一瞬で合流できるんす! これもセレーネから聞きました!」
「まじか……」
だんだん現実離れな仕様が明るみになってくるな。現実じゃないんだから、何でもありといえばありなのだろうが。どうやったのだろう。
「コーディネイト・コージ!」
フミトが呪文のような言葉を発した瞬間、フミトの姿が光となってコージの目の前に移動し、やがて光は再びフミトの姿となった。
「こう言えば、相手の目の前に瞬間移動できるらしいっすよ!」
「すげえ……」
バスで移動してきた自分が何だか馬鹿みたいに思えてくる。それはそうと、試してみたい。いい歳して恥ずかしくないのかと言われそうだが、試してみたい。
「コーディネイト・フミト」
恥を忍んで呟いてみた。そして、何も起こらなかった。
「……」
「あれ? 何も起きないっすね。オレはこの距離にいても数センチだけ瞬間移動したのに」
恥ずかしい。三十路のおっさんが呪文を唱えて、しかも何も起きないというのは、恥に恥を重ねたみたいで居たたまれない。頭を抱えて座り込んだコージを、誰が責められようか。
「あははは! コージさんかわいい~」
フミトに大笑いされる始末だ。頼むから何も言わないでくれ。