パーティ結成 -8-

文字数 1,436文字

「よし……」
 今度は集中を途切れさせるものは無い。フミトは矢を放った。敵はコージへの攻撃を止め、フミトに対象を変えた。吐き出した種は矢に当たって軌道が変わり、惜しくもマンドラゴラの口の脇を切り裂いただけで致命傷にはならなかった。
『ギィヤァーーーー! ギィヤァーーーー!』
 傷を負ったことで、敵はまたやかましい声を上げる。状況は振り出しに戻った。
「あー、うぜえ! 耳栓無いっすか!?」
「あったら俺が付けたいよ!」
 二人の苛立ちが高まっていく。振り出しどころか、悪くなる一方だ。マンドラゴラは笑うかのように目を細めると、再び種を放ってきた。魔法の吹き矢で狙いを付けていたコージは回避を余儀なくされる。何とか攻撃を躱すも、地面に転がった種を踏んでバランスを崩し、つんのめってしまう。
「こっちだ!」
 フミトが矢を放って気をそらしてくれたお陰で、コージへの追撃はされずに済んだ。マンドラゴラは今度はフミトに種を放っている。遠距離で攻撃しても、種で逸らされてしまうのでは、魔法の吹き矢でも通用するか分からない。そうなると、近づいて切り伏せる以外に手が無い。あの気が狂いそうな声さえどうにかできれば……。コージは立ち上がる。そして、地面に転がる大量の種を見て、ある考えを思いついた。
 攻撃が集中するフミトは、弓に矢を番えることすらできずに走り回る。苦々しく睨みつけるが、敵は小躍りするようにバタバタと根を上下させながら、種を吐き続ける。敵が足音に気づいて振り向くと、コージはマンドラゴラに向かって一直線に走ってきている。ジグザグに動いているならまだしも、一直線に向かってくる相手になら狙いを付けやすい。敵はニヤニヤしながら種を発射してきた。
 コージはルミナティソードを縦代わりにし、種をはじく。肩や脚には当たるが、大きなダメージにはならないのでそのまま一直線に走る。敵は種攻撃をやめ、不快な奇声を出す。これで、コージはまた遠ざかる、はずだった。コージは顔色ひとつ変えずに接近した。マンドラゴラは慌てて種攻撃に切り替えようとするも間に合わず、コージの一薙ぎで真っ二つになり、透明になって消えていった。「戦闘に勝利した!」のガイドが現れた。そして、消えた敵の代わりに、アイテム「マンドラゴラの根」が現れた。そして、コージのアームヘルパーに吸い込まれていった。
「すげー! 倒しちまった!!」
 フミトが興奮しながら走ってきて、コージの肩を叩いた。
「コージさん、すげえ! あのうるさい声を出されても、普通に近づいてなかったすか!?」
 コージは両耳から何かを引っ張り出して、フミトに見せた。それは、マンドラゴラが吐き出した種だった。
「こいつを耳栓代わりにしたんだ。耳の穴にちょうどいいサイズだったからな」
「まじすか!? 機転利き過ぎてやべえ!」
「フミトのお陰だよ。耳栓の話をしてくれたから、大量に転がってる種を見て、こいつで耳を塞ごうと思ったんだ。それより、せっかくアイテムがドロップしたのに、俺のになっちゃった」
「そんなんいいっすよ! 倒したのコージさんだし。気にせず取っといてくださいっす!」
「じゃあ、遠慮なく。それより、今度こそ屯所まで戻ろう。かなり時間を食ったし」
「了解っす!」
 二人は屯所へと戻った。ゲームのようにターン制で戦えるわけじゃなく、直接攻撃以外にも思わぬ妨害手段があるもんだな、と思ったコージだった。屯所にいた平八に報告して報酬を貰い、待機所で体力回復をするため休息を取った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み