クエスト -2-

文字数 1,219文字

 家の外は、何のことはない、いつも通りの街並みが広がっていた。本当に現実世界から離れているのかと、何度目か分からない自問をし、アームヘルパーに触れては、ルナの中にいるのだと自答した。現実世界を忠実に再現したルナの技術に、これまた何度目か分からない感嘆の息をもらした。
 アパートの通りを少し進んだ先の角にあるコンビニ、三軒先のハンバーガーショップ、通りを歩く人、どれをとっても違和感がない。すれ違った大学生風の男子二人組の会話も、何気ないものだ。
 いつも通り過ぎて、クエストがどこに転がっているのか分からない。テレビの内容から察するに、街中の困っている人を見つけて、解決してあげればクエスト達成、そして謝礼という形で見返りがあるのだろう。その困っている人は、どうやって見つければ良いのか。できればそこまで教えてほしかった。
 しばらく道を歩いていると、街の掲示板がある辺りに数人がいて、頭の上に吹き出しが浮かんでいる。吹き出しの中は「…」となっていて、いかにも話しかけろと言わんばかりだ。ゲームで言えば、シナリオを進めるヒントをくれる存在であることをプレイヤーに知らせる目印だ。コージはしめたとばかりに、彼らに話しかける。
『掲示板には、時々クエストが貼り出されるんだ。注意して見といた方がいいぜ』
『クエストはいくつでも同時に受けられるのよ。もし、何を受注しているのか分からなくなったら、メニューのクエストを見ればいいわ。ちなみに、複数のクエストのうちメインで進行しているものをメインクエスト、それ以外のものをサブクエストと言うのよ。メインクエストを変更したかったら、メニューから操作できるわ』
『クエストを受けていると、次に何をしたらいいか分かるようにガイドが出るんだ。複数のクエストを受けている場合は、メインクエストしかガイドは出ないから注意してね』
『掲示板のクエストをこなしてくと、たまにレアなクエストを受けられるらしいよ。レアなクエストは掲示板には掲載されないんだけど、じゃあどうやって受注したらいいんだろう……?』
『クエストは人助けするものと、戦闘が必要になるものがあるのよ。人助けの方は、必要なものを調達して届けてあげたり、探しているものを見つけてあげたりする依頼よ。戦闘の方は、この世界に存在する”クリーチャー”と呼ばれる敵を倒す依頼よ。すごく強い敵もいるから、最初のうちは人助けしてレベルを上げるのがお勧めよ』
 予想通り、有益な情報が得られた。クエストの基礎知識としては、今の話を覚えていればよさそうだ。
 そして、現実そっくりのこの世界に、やっと非現実的なワードが現れた。”クリーチャー”――RPGでいう魔物やモンスターのことだろう。コージは、子供の頃に初めてゲームをプレイした時のような胸の高鳴りを感じていた。
 掲示板を確認すると、依頼が三件貼り出されていた。二つは戦闘クエストだったので、残り一つの非戦闘クエストを読んでみた。
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