そうして私も空性を思う

文字数 1,853文字

ダライラマ法王の講義2日目。今日も会場には大勢の僧侶たちと聴衆。後で聞いた話では、4500人もの方が参加されていたのだそう。

今日は「心の覚醒」の講義に入る前に質疑応答から始まった。カルマの浄化や徳行、慈悲心や英知、愛や執着に関する質問に、ダライラマ法王がユーモアを交えてシンプルにわかり易~く応えてゆく。

それから、講義。そうして気がつけば、私はまた発作的に睡魔に襲われているんだ。あ、いけない、また……。喝---ッ!!! 

時おり意識は朦朧として、一瞬の夢の世界をふわふわと彷徨ってしまう。お~っと、いけない、喝ーーーッ!!! 集中すべくノートをとりつつ耳を傾けておりました。。。

そうそう、夢の世界と言えば、ダライラマ法王は夢のなかではいつもチベット仏教僧なんだそう。ダライラマとしての夢は見たことがなく、いつも一介のチベット僧だという。う~む、興味深い。

ちなみに私は夢の中でも十中八九、つーか、ほとんどいつも自分である。でも私の友達は男だったり女だったり、ときに犬だったりもするとか言っていたっけ。う~む、彼女のアイデンティティは潜在意識レベルで実にフレキシブルだと言うことでしょうか? 興味深いです~

さて、この日の講義。私は「縁起」と「空性」の話が1番心に残った。この奥の深~~~い思想を私が論じても仕方ない(つーか危ういので)、「空」について一言だけ。そう、「色即是空、空即是色」のあの「空」デス。

法王は今回も、「空」(英語ではEmptinessと訳される)を西欧人は「無Nihilism」と誤解してしまうことがあるけれど、「空」は決して「虚無Nothing何もない」という意味ではないのだと注意をされていた。「空」とは全ては無常で在り、絶対的な在り様もなく、それ自体固有の在り様もない、ということで。

法王の話を聞きながら自分が若かったころニューエイジの本なんかでよく目にしたフレーズ「あなたが変われば、世界が変わる」を思い出した。あれは正確には「あなたが変われば、[あなたの]世界が変わる」だ。何かに不満を抱いたときは「空」について考えることにしよう。そう至極しぃんなりと心に入ってきた。

今回のダライラマ法王の講義は2日間と言うことで、あっという間に終わってしまった。法王を見送った後、心にはそこはかとない淋しさが広がった。幼い子持ちの身でメルボルンから飛んでくるのは大変だったのに、もう終わってしまった…

その夜、やはり講義を聴きにメルボルンからやって来た友達ファミリーと中華街でディナーをとりながら、なんだか寂しい…と打ち明けたら、彼女も同じだと言っていた。久々の和食は美味しくて、お寿司や枝豆を頬張る子どもたちは愛しいというのに、心は沈んでしまうんだ。

だけど、いけない。これじゃあ全く法王の教えが活かされていないではないか! 全ては「空、Emptiness」なんだから。私が変われば、私の世界も変わる―

当たり前のことだけど、法王の講義がどんなに面白かろうが、全ては移り行く。状況は変わってゆく。ここで私が終わってしまった法王の講義に浸って空しくなることに、何の益があろうか? 「NOW、HERE」を意識して、感謝して、今はこの場に集中して楽しむべきなんだ。お寿司も牛丼もほぉらこぉ~んなに美味しいし(それにしても、この食べ合わせ…)、もりもり一心に食べる子どもたちは可愛いし。講義のことは後で分析的瞑想をして、ゆっくりと吸収してゆけば良い。

その夜、アパートメントホテルの屋上にあるプールで、スパに浸りながら去年の講義から今までに起ったことについて思いを巡らせた。私自身がどれだけ成長できたかは甚だ怪しいところだけれども、今夜一緒にディナーを取った友達ファミリーの状況が素晴らしく良くなっていることに改めて思いを寄せた。

去年、体調を崩していた彼女は無理して法王のパブリックトークを聞くためにシドニーに来て、Gyuto Monksのヒーリング僧から癒しの祈祷を受けることができたのだった。祈祷が効いたのかどうかはわからないけれど、以来ひどい出血も収まって、今彼女のお腹の中には赤ちゃんがいる。年が明けたらベイビーが生まれる!んだ。彼女たちが心待ちにしていた第2子が。なんて喜ばしいことだろう! 今夜の彼女の盛大な食欲と大きなお腹を思い出せば胸が温かくなる。良かったねぇ。

そうして見上げれば、満月の夜。窓の向こうにはシドニーの夜景が広がっている。魅惑的な月に暫し見惚れておりました。


 2009/12/2
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