雨の蚤の市

文字数 2,798文字

娘が毎週土曜日に通うジャパニーズスクールの「蚤の市」だった。保護者はもちろん外部の人たちにも開放される年に1度の学園祭で、娘はもちろん入園前の息子まで楽しみにしていた。

実はこの週末は、子どもたちの現地校モンテッソーリ・スクールのファミリーキャンプだった。なので、今年は「蚤の市」の方には参加しないつもりだったのだけど、肝心の子どもたちの方が「蚤の市の方に行きたいよ~!」と譲らず、キャンプの方は断念したのだった。

とりわけ息子の蚤の市に行きたい!という思いは強くて、寝る前に皆で「今日の嬉しかったこと」を報告し合うときにも毎晩「蚤の市がムゥの命!」と宣言していたほどで。過去を振り返るよりも未来の「蚤の市」への期待感を語ってしまう。子どもなら喜びそうなキャンプファイヤーやブッシュウォークなんかを振り切ってまで「蚤の市」に参加したいと思ってしまう。

そんな息子の熱意に、ムゥってばそれほど日本文化が好きなのねぇと感激していたら先日、娘が弟の思いを解説してくれた。なんでも「蚤の市」のフリーマーケットで、今年もど~~~してもおもちゃをゲットしたいんだそうで…。そういえばムゥは去年、フリマに出ていた中古のウルトラマンの怪獣をお小遣いで買ったのだった。

ああ、それで…。私としてはちょっと残念な動機ではあったけど、まあ4歳児なんて、こんなものですよねぇ。

さて、それほどまでにムゥが楽しみにしていた蚤の市は、あいにく凍える雨だった。天気予報でも一日中雨ということで…。

「蚤の市、だいじょうぶかなぁ~? できるのかなぁ?」と心配顔の娘。
「なんで? なんで雨だと蚤の市がダメになっちゃうのぉ?」と、ムゥ。
「大丈夫でしょ、きっと体育館とかホールでやるよ」と、私。
「でもママ、あそこそんなに大きくないよ。イベントみんな入るかなぁ?」と、ますます不安を募らせるメェ。

実際、娘の懸念通り大ホールで全てのイベントは無理だった。メェを学校に送ってから戻って来たダディンによれば、蚤の市は予定通り校庭ではなく大ホールで行われるものの、ムゥが「自分の命」とまで言い切って待ち焦がれていたフリマの方は中止されることになったんだそうで。実際には中止ではなく延期だそうだけど、そんなこと「今このとき」を生きている幼い息子に通じるはずもなく、いやぁ泣きましたよ、泣きました、ムゥ大泣き。

結局、雨の中ホールで開かれた蚤の市だけど、それでも盛況だった。

大ホールでは、幼稚園から高校生の部まで各学年がファンドレイジングの一環に用意した様々な手作りのゲームが賑やかに所狭しと並んでいた。輪投げ、おもちゃ釣り、お手玉投げの缶倒し、おまけつきのお菓子釣り、変装ゲーム、パターゴルフ、ボーリング、お化け屋敷に、水風船釣りなどなど。

ちなみにこのお化け屋敷は全くの手作り。子どもたちが父兄と一緒に段ボール箱なんかで作っているのだけれど、いやぁなかなか、めちゃ恐でしたわ。とにかく真っ暗で何も見えないのよ。以前、幼稚園児だった娘と入ったときには真っ暗闇にパニックを起こした娘が泣き叫び、即退場するハメに。数歩進んだだけで入口から出てきた。

その後、小学校低学年生になった娘は再挑戦!と勇気を出して入ったときには―。やはり真っ暗、そこかしこから子どもたちの悲鳴が…。真っ暗闇の迷路でただでさえ恐ろしいのに、どうやらそこかしこにお当番さんの脅しサービスが入るらしくて。あっという間にメェ再びパニックに。だけどもう引き返すには後進組を押しのけなきゃならならないわけで…。後戻りもできずに、やむを得ず進み続けましたよ。

「子どもが恐がっているので脅さないでくださ~い! 子どもが恐がっているので脅さないでくださ~~~い!」と、誰にともなく大声で叫びつつ。いやぁ今思えばハタ迷惑な親子の迫力。脅し役の生徒さんや他のお客さんたちの方が驚愕していたことでしょう。

それにしても土曜日だけの学校なのに、お化け屋敷なんかを手作りしちゃう子どもたちと親御さんたちの入れ込み方、すごいデス。

ちなみに娘の学年は例年通り変装ゲームだった。子どもたちは会場に紛れ込んだ赤ずきんちゃんや海賊を探してカードにスタンプを押してもらい、スタンプがそろったらカードと引き換えに景品をもらうっていうスタンプラリーみたいなゲームなの。受付とかは父兄が交代で担当するのだけれど、変装は子どもたちがすることになっている。毎年、娘は変装して、見つけた子どもたちにスタンプを押してあげるのを楽しみにしていた。「はいはい今押しますよ~、並んでね~」みたいな保護者気分が楽しいらしくて。

けれど残念ながら今年は現地校のスクールキャンプで蚤の市には参加できないハズだったので、既に当番も免除していただくように手配していた。よって、当番も無し。メェはかなり残念がっていた。

蚤の市のゲームはどれも50セントとか1ドルと手頃な値段で楽しめるので、子どもたちは小銭を握りしめて走り回る。メェはお財布を忘れてしまってガッカリしていたのが、景品でなんとお財布を貰った!? 棚ボタ的幸運に大喜びで小銭を入れて蚤の市に参加していた。弟のぶんも払ってあげたりして、意気揚々ね。

結局フリマの中止でその朝は大泣きしたムゥも、景品でおもちゃをたくさん貰って大満足だった。中でも缶倒しで貰った小さな怪獣のおもちゃがすご~~く嬉しかったようで。帰りに寄ったレストランでは怪獣をテーブルに並べて一緒に料理を楽しんでいた。^ ^ 

メェの方の景品でお気に入りは赤いネックレスで、早速身に付けていた。「これつけるとなんだかちょっとエライ気分になるんだよね~」、と。^ ^

今年は学校の創立25周年ということで、大ホールでは生徒たちの作品展も開かれていた。子どもたちののびのびした習字や絵俳句、短歌、絵画などが展示されていたが、子どもたちの作品ってどれもこれもいい味出している。見ているだけで口元が緩む、癒し系ですね。

娘たちのクラスは国語の授業でつくった本の帯を展示していた。娘の選んだ本は『森のスパゲッティやさん』。「あのねぇ、見ていると読みたくなって、食べたくなるような、美味しそ~うな帯をつくったんだよ~」と、メェ。ほんとハッピーで美味しそうな帯だったよ。

さてさて、この後も25周年記念行事の一環として隠し芸大会や合唱祭などのイベントが予定されているとのことで、娘もその練習に余念がない。

それにしても、オーストラリアのメルボルンで生まれ育つ娘がちゃんと日本の教科書を使って勉強ができて、多少ヘタではあっても漢字をつかって作文や日記を書き、日本の本を読むことができる。それもこの学校のお陰デス。ほんと~に感謝、感謝だわ。

来年からはムゥもここの幼稚園部に入園する予定で、来年の蚤の市も姉弟そろって元気に参加してもらいたいものです。


2010/11/13
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