ムゥ、何が見えるの?

文字数 743文字

2歳の息子がたまぁぁに妙なことを言うときがある。

昨日は買い物の帰りにカフェでお茶をしていたら息子が唐突に言った。
「ママ、あのひと、くらくなってる」

最初私は気にもしなかったのだけど、その後から入ってきた親子が私たちのテーブルの横を通り過ぎるときにまた言った。
「このひとたちは、くらくなってないから、だいじょうぶだね」

今度は気になって、「暗くなっている」とはどういうことなのかを聞いてみた。

すると気分が暗いとか明るいとかそういうことじゃあなくて、光や闇の明暗のことだった。どうやら息子の目にはその人の周囲が真っ暗に見えたらしい。

もしかして、この子ってば、オーラのことでも言っているのかしら?

それで、どの人が「暗くなっている」のかと尋ねてみた。私たちの後ろには80歳を超えていそうなおばあさんが座っていた。けれどムゥの視線はおばあちゃんを素通りして、カウンターの横を指した。

「あの人、暗くなってる。大丈夫じゃない」と眉間に皺寄せ、哀しげな顔で首を振った。

ムゥが指したその人は若い女性だったのだけど、松葉杖をついていた。そうして振り向いたその顔は、私も一瞬びっくりしたくらい青ざめて見えた。

幼い子どもたちには大人に見えないものが見えるというけれど、ムゥの目にはいったい何が見えていたんだろう? ほんとにオーラみたいな、生命エネルギーが見えたんだろうか? 死を間近に控えた人のオーラは真っ暗になると何かで読んだけど、息子の目には彼女の周りが暗くなっているのが見えて、普通の人と違う様子に、幼いなりに心配したんだろうか?

だけどやはり2歳児。問い詰めると訳わかんなくなってゆくのが常であるから、私はもうそれ以上は尋ねなかった。

それにしても1度、子どもの目を通して世界を見てみたいなぁ。

2008/8/9
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み