サンタクロースの包装紙

文字数 2,418文字

ここオーストラリアでは25日にクリスマスを祝うため、イヴの夜は街もひっそり。私たちも一般的なオージー同様25日にダディンの実家で一族(?)揃ってクリスマスを祝った。

だけど私にとってクリスマスといえばイヴの夜。日本ふうに苺の生クリームたっぷりのクリスマスケーキに、ケンタッキーのフライドチキン、シャンパン(ふうスパークリング・ワイン)でお祝いを。ちなみにこっちでクリスマスケーキといえばアイシンでコートされた洋酒入りのナッツとドライフルーツたっぷりのケーキとか、ブランデーの青い炎を纏ったクリスマスプディングとかなので、苺のスポンジケーキはわざわざオーダーメイドしちゃいました。

でも子どもたちの方は、そんなことよりサンタクロースのことで(厳密にいえば、彼が運んでくれるプレゼントのことで)頭がいっぱい。娘のメェはさっそく玄関にサンタコーナーをしつらえて、サンタさんとトナカイさんのお夜食を用意していた。クリちゃんのクリスマスパーティーで作って冷凍保存しておいたサンタクッキーと、トナカイさんの魔法の餌。それとサンタにはアップルジュース、トナカイさんにはお水を。

どうして暖炉やツリーの傍ではなく玄関かといえば、メェが22日にサンタクロースへ手紙を書いて暖炉の前に置いたところ、翌日にはまだあった(つまり私もダディンも手紙に気づかず取り忘れた)のに、翌23日に今度は玄関に手紙を吊るしたところ、翌朝にはなくなっていた(お陰さまでダディンが気付いて取っておいてくれた)という経験から、この家の場合サンタは煙突からではなく玄関から出入りするのだろう、と推論したからだった。私としては、サンタの生態を探ろうとする娘の科学的思考が嬉しかったデス。

さて、子供たちの期待に応えるべく、親としてはこれからこっそりサンタからのプレゼントを置いたり、あたかもサンタやトナカイがお夜食を食べ散らかしていったかのように工作しなければならない。でも私は子どもたちを寝かしつけなくてはならないため、その処理はダディンにお任せすることにした。というのもメェは恐ろしく寝付きが悪いため、常時疲れている私は起きていることができず、たいてい一緒に眠りに落ちてしまうから。大切なお役目をダディンに一任してしまうことに一抹の不安を覚えたものの、プレゼントはもう完璧用意してあるし、後は興奮していつ起きるかわからない子どもたちのために12時前に置くだけだから、と繊細を念押してから寝室へ引っ込んだのだった。

2時ごろハタと目が覚めて、やはり気になって、眠い目を擦りつつサンタコーナーをチェックしに行ったところ…
クッキーもトナカイの餌も、なんとそのままになっているではないかっ! もちろんプレゼントも置いていなかった!

むっとしつつも子どもたちが目覚めてしまったら大変なことになってしまうと、クッキーを処理。し始めたら、ダディンがやって来た。ダディンは、オージー・サンタは自分の担当だから今年は絶対に自分がやるのだ、いっさい任せてくれ、と頑として譲らず。甚だ心許なかったものの、ここで口論していて子どもたちを起してしまったら大変なので私はベッドに退散することにした。

そうして翌早朝、娘は目覚めるやサンタコーナーへ一目散。そこにプレゼントがなかったことで、メェは自分の読みが外れたとに失望したものの(だからここに置くようにと言ったのに、ダディンときたら暖炉が伝統だからと譲らなかったのだ)、それでもお夜食の方はなくなっていたので、大喜びだった。自分が作ったクッキーも、弟のものも半分ずつ食べてあって、ジュースは6分目、トナカイさんの皿の方はほとんど空になっていた。

ダディンったら、芸が細かいじゃないの。と、私もホッとしたものの…。
暖炉の前にプレゼントを発見した娘が大はしゃぎで包みを破り始めた、まさにそのとき―
包みを見て、私の目は点になってしまったのだった。。。

なぜっ!?
これは…私がメェと一緒に大手スーパーCOLESで買ったラッピング・ペーパーではないかっ!?
しかもその下には近所の商店街店のロゴ入り紙袋がっ!!!
なんでサンタクロースが近所の商店街の紙袋を使用しなければならないのだっ!?

そのサンタ用プレゼントは、私がわざわざお店のスタッフに使用意図を説明して、お店のロゴマーク等は一切排除してラッピングしてもらったものだった。なのに、ダディンは何を考えたんだか(たぶん何も考えず無意識的に)そのプレゼントを更に自分で包装してしまったのだった。なぜかそれを近所の商店街の紙袋に入れたうえで、その上からまたラッピングをしていた。しかもその包装紙ときたら、メェもムゥもお友だちへの包装に使った我が家のお徳用ファミリー・ラッピングペーパーである…。

メェは幸いプレゼントの中身に夢中で、包装紙と近所の商店のロゴ入り紙袋には気が付いていないようだったので、私は密かに、けれど迅速にそれらをカウチの下に突っ込みましたよ。プレゼントを手に喜ぶ娘の笑顔に安堵しながらも、内心ダディンのお間抜けぶりにハラワタを煮えくり返らせながら。

それにしても気付かれないで良かった。これまで苦労して築き上げ、守り続けてきたメェのクリスマス・ファンタジーを一瞬にして破壊してしまうところであった。

安堵したのも束の間、起き出したムゥがサンタからのプレゼントを開けるのを見ながら娘が一言。
「ママ、サンタさんもお店行って、プレゼントを買うんだよね。小人さんたちが作るんじゃなかったんだよ。メェは気付かなかったけど、サンタさん、メェたちがいつも行くお店に行って、買ってきたんだよね」

う、、、やはり気づいてしまったんですね。。。

サンタ伝説、娘のは7歳にして崩壊か? 息子のそれは、果たしていつまでもつのだろうか?

それでもクリスマス・ファンタジーには永遠に生き続けてもらいたいものです。

皆さま、良いクリスマスを!


 2009/12/24
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