そうしてSydneyの空にはペリカン 

文字数 1,027文字

6月10日の空は濃霧に覆われて、そのせいで飛行機は遅れまくった。
「まぁだぁ?」「いつ飛ぶのぅ?」
待ちくたびれて退屈し、余計に小うるさくなった子どもたちを宥めつつフライトを待っていた。

実は今回ダライラマ法王が再びオーストラリアに来られると聞いて喜んだのも束の間、講義はシドニーだけでメルボルンには寄らずキャンベラに一日滞在するのだと聞いてガックリきていたのだった。今回はご縁がなかったってことなのね、と諦めていた。

それが先月、知人が遊びに来て、話がダライラマ法王のオーストラリア・ツアーになると彼女が突然、行くべきだと力説し始めたのだった。自分は行かないのに、私には強く推してくるその態度に驚き戸惑いつつ、そんな急に休みなんて取れないしとか、お金ないしとか、「無理な理由」を並べて受け流した。

その翌日、Dalai Lama in Australia事務所から講義の案内メールが届いた。去年参加したときに案内を希望したからなのだけど、そのタイミングにちょっと驚いた。

その後、今度はチベット仏教徒(たぶん)の日本人の友達が、私たち夫婦が法王の講義に行って貰って来たテキストを配っている夢を見た(!?)と言ってきた。でも今回私たちは行かないんだよ~と笑ったものの、なんだか気になった。

それで朝の瞑想のとき、もしも行った方が良いのならば何かサインを送ってください、と天に頼んだ。

するとそれから5日間続けてチベット僧や尼さんを見た(夢ではなく現実に!)のだった。通りでたまたま見かけただけなのだけど、チベット仏教の臙脂色の袈裟を纏った方と毎日擦れ違うなんて、私の人生において初めてのことだったから、これはシンクロニシティかも…と。

だけど行くとなったら、子どもたちを置いてゆくわけにはいかないし。家族4人となったらお金もかかるし。上の子なんて学校を休ませなきゃならないし…。

当然オディンは反対したけれど、結局こうして一緒にシドニーの空を眺めているわけで。

シドニー空港に着いたときには既に日が暮れ始めていた。タクシーの窓から妙にドでかい鳥が横切っていくのが見えた。何かと思えばペリカンだった。夕焼けの空を舞うペリカンの姿に子どもたちは大喜び。

そうか、ペリカン。宅急便だナ。

そんな連想をしつつ、友達の夢の話を思い出していた。テキストは無理でも何かを運べたら、実のあることを学んで帰ってこれたら嬉しいんだけどなぁ、と。

さて、やって来ました、シドニーです。

2008年6月10日



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