私の守護トンボ…ですか!?

文字数 4,157文字

事の起こりは先月半ば、マインド・ボディ・スピリット・フェスティバルで。居並ぶブースの一つで、頭にフェザーをつけた恰幅のいいヨーロッパ系のおばさまが豪快にドラムを叩いていた。ブースには大小様々なドラムに加えて、ドリーム・キャッチャーやアメリカン・ネイティヴ・インディアンを描いた絵なんかが売られていて、ドラムにはそれぞれ動物の絵がペイントされている。そこは、どうやらネイティヴ・インディアン崇拝系のブースであるらしかった。

フェザーおばさんの前には若い男性が坐っていて、おばさんはその男性に向かって呪文だかマントラだか(もしかすると単に英語だったのかもしれない)を歌うように節をつけて大声で唱えながら、豪快にドラムを打ち鳴らしていたのだった。ドラムの響きが妙に心に響いて、思わず聞き惚れてしまった。

「あんたもやってみるかい?」と、演奏(?)を終えたフェザーおばさんから声をかけられた。なんでもこれは演奏ではなく「リーディング」(霊視)で、おばさんは相手のGuardian Animal God―守護動物神とつながって、メッセージを伝えてくれるんだそうだ。

怪しげだ…(--;)とは思ったものの、予約を入れた。ドラムのビートが妙に心地良くて、もっと聴きたい気がしたし、以前友人がこのフェスティバルでガーディアン・アニマルのリーディングをやってもらって、「すご~くよかった、涙が止まらなかったよぅ」と言っていたのを思い出したのだった。他にアニマル系のリーディングは出ていなかったから、きっとここのことを言っていたのに違いない。

さぁて、私の守護動物神って、何だろう?

私は物心ついたときから犬好きで、母によれば家で犬も飼っていないのに最初に話した言葉が「ワンワン」だったというから、やっぱ守護動物審なら犬なのかもしれないナ? 思えば4歳のとき私の犬ねだりのしつこさに根負けし、母が同僚からスピッツの子犬を貰い受けて以来、我が家から犬の姿が消えたことがないってくらい犬とのご縁は深いんだ。

あ、でも…。私の干支は龍だからドラゴンとかかもしれないなぁ? 実在しなくても、なんといっても守護神、霊界系なんだからねぇ?

ワクワクしつつ、フェザーおばさんと向かい合って坐った。おばさんが時々、店先を覗いてゆくお客さんとブースを一緒にやっているご主人との会話に口を突っ込んで、セールスを始めてしまうのが歯痒かったけれども。もっとこっちに集中して欲しいゾ~~~ (^ ^;)

それでもドラムを叩き、何やら呪文を歌い出せば、だんだんとさっきのシャーマンふうオーラに入ってゆく。

熱気で疲れた心にドラムの響きはと~っても心地よかった。この響き、癒し系ですねぇ。昔からシャーマンを始めいろんな民族や宗教が儀式に太鼓を打ち鳴らすけど、その理由もわかるよね。だってこのビートに心身を任せているとトランスにも入りそうだもの。

5分ほどで太鼓打ちを終えると、トランスから戻ってきたおばさんが早速メッセージを伝えてくれた。

「入ってゆく途中に、すっごく美しい庭園に出たよ。陽光の下、緑が輝いて、噴水のしぶきが上がって、バラが咲き乱れ、七色の蝶が舞う。ヨーロッパ風の庭園だった。あれは私の庭じゃない、あんたの庭だね。あんたは疲れたときや瞑想をするとき、あの庭に行くといいよ」

はあ、庭園ですか…。
そういえば、ガイド瞑想なんかで庭をイメージするときにそんな感じの庭をイメージしたことがあった。それのことかしらん? などと考えていると、フェザーおばさんはグイとこちらに身を乗り出した。

「で、あんたのアニマル・ゴッドなんだけどね。あんたのは、ドラゴンフライだよ」

へ? Dragonflyといえば―ト・ン・ボ?っすか?

え、「トンボ…」が、私の守護動物神…なんですかぁ??? 

え~、だって、これ、「動物」神なんでしょ~? だ~って「トンボ」つったら、昆虫じゃないっすかぁ? それならせめて蝶とかにしてもらいたかったぁ~~~

私の「腑に落ちなさ」をシャーマン(ふう)おばさんは英単語がわからないのだと考えたらしく、
「ドラゴンフライ、わかるかい? ド・ラ・ゴ・ン・フ・ラ・イ。今、見せてあげようね。ドラゴンフライっつったらね、昔から、スゴイんだよ。なにしろ神界とこの世をつなぐメッセンジャーなんだからねっ」などと言いながら、「Holy Animal Spirits」なるオラクル・カードを取り出して「Dragonfly」のカードを見つけようとするものの見つからなかった。

だよね~、なにぶん「トンボ」だもんね~、あるわけないよね~

それでおばさんは商品としてブースのそこかしこにずらりと並んだ動物守護神の絵の描かれたドラムを探し始める。

「あ、あった、あった! これだよ、あんた、ドラゴンフライっていうのは」
かなり探した後におばさんはやっと奥の方から小さなドラムを持ち出してきた。
「ほら、これ」

やっぱ、トンボじゃん…。

店先に居並ぶドラムより3回りくらい小さいそれには、ちょこんとトンボさんの絵が描かれている。これを叩きながら瞑想し、守護動物神とつながるといいのだと、おばさんはセールスを始めた。どうやら絵はおばさん自らがペイントされたようで、リーディングの後は守護動物神の描かれたドラムを勧めているらしい。

だけど誰が買うかい、「トンボ」神のドラムなんて…。プイッ。ま、確かに、他のドラムより遥かに小さいぶん、お値段的にはお手頃そうではあったけど。

おばさんのリーディングは続いた。
「いいかい、あんたはこれから街でトンボを見かけたら、天からのメッセージだと思うんだよ」

そんなこと言ったって…。今どき「トンボ」なんて街で見かけるかいな。

「いいかい、テレビでトンボが出てきたときなんかも、それは天界からのメッセージってことだからね」

でもでも、TVに「トンボ」が出演する確率は、アニマル・プラネットなんてチャンネルでもかなり低いに違いない。

かなりシニカルな気分になった私は帰りの電車の中で友だちに「わたしのホーリー・アニマル・ゴッドってばトンボなんだよ~」などとジョークのネタにしていたのであった。

でもって、後で先の友人に話したところ「え~、そういう人じゃな~い、違う人だよ」と、あっさり。どうやら同系のリーディングであっても人違いだったようだ。チャンチャン。


ところが―7月に入って、ダライラマ法王の生誕を祝う法要のときのこと。祈祷していたら、誰かがす~っと傍らに降りてきて、背中を触れられた、ように感じた。

と、チベット僧が見えた。上半身だけ、はっきりと。後ろに降りた方のエネルギーとは違ったけれども、その方は、高僧が儀式のときなんかに纏う金色の三角帽と袈裟を着て、にこにこと微笑んでいるのだった。どなたかはわからなかったけど、高僧だということはわかった。

そういうビジョンは、たいてい暫くすると消えてしまうのだけれども、そのときは2時間近い祈祷の間ほとんどずっと見えていた。両肩を触れられているような、包まれているような感触も続いていて、ときおりとてつもなく美しい芳香が漂ってきた。

法要を終えてから家族でランチに行った。ヤラ河沿いのコンサートホール内にあるカフェでランチを食べて、隣接した日曜マーケットをぶらぶらと散歩した。

「スカーフはどうですか?」という女性の声に顔を上げれば、それはトンボの描かれたスカーフだった。
あら、トンボ柄? お珍しい。

「あの店が見たい!」と娘に手を引っ張られ、覗いた出店の店先には天然石で造られた万華鏡やアクセサリーが並んでいた。そのテーブルの端には「トンボ」のイヤリングが、ずらり。

トンボ続きに、あのときのメッセージを思い出した。法要の後でエネルギーが変わって、霊的に敏感になっているんだろうか? それで天に頼んでみた。もし「トンボ」が私のホーリー・アニマル・ゴッドであるのなら、もっとサインをください、と。

翌朝。私はいつも瞑想の前にお香を焚くのだけれども、香炉が古くなって穴が詰まって、お香が立たなくなってしまったので、だいぶ前に買い置きしておいた新しい香炉を取り出した。と、なんとそれは「トンボ」の描かれた香炉ではないかっ!?

その香炉は、私が普段焚いている棒状の太いお香と穴のサイズが合うため、以前から時々同じものを買ってきては使っていたのだった。でもお香の穴のサイズで選んでいたから、デザインになんて気を配ったこともなくて、そこに「トンボ」が描かれていたなんて全く気づかなかったのだった。

そうしてそれからも「トンボの偶然」は続いた。

「マミィ、これ落ちてたけど使ってい~い?」と息子が持ってきたシールは「トンボ」のシール。

娘が友だちに贈るバースデーカードがいるというので、買い置きしてあったカードを取り出せば、「トンボ」柄。

え~~~、日常生活にこぉぉぉんなに「トンボ」って存在してたんですかあ!? 「トンボ」って、そんなにポピュラーなキャラだったんですかぁ!?と、驚くほどに。

極めつけは、夜。寝室に置いた祖母の写真や、愛犬ローリィちゃん、ムムくん、モモちんのお骨と写真の並んだ棚にビーズでできた「トンボ」のキーホルダーを発見した!のだった。それは何年も前にビーズ作りに凝っていた友人から頂いたものだ。確か2階の、私の書斎にある鏡張りの小箱の中にお菓子と一緒に入っていたはずだ。それが、なんで今こんなところに??? 

だいたいこの部屋はこの間、洪水後の修復でカーペットを貼り直したときに家具類も全て出して空にしたのだった。その後、必要最小限のものだけを戻したという状況なんだ。なのに、いったい誰がわざわざ私の書斎の小箱に入っていたキーホルダーなんかを寝室に持って来たんだろうか??? 

子どもたちやダディンに聞いてみたけれど、「知らないよ~。なんのことぉ?」

その後も私の生活に「トンボ」は頻繁に登場してくるようになったのでした。まあ、単に私が「トンボ」の存在に敏感になって、気がつくようになったのだという論理的な解釈もできるわけですが。

それでも今では素直に思うようになったのでした。「トンボ」ってばスピリチュアルな世界からの、私のメッセンジャーだ、と。


2010/7/23
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