2匹がウチに来た日

文字数 2,711文字

ムムが逝く日に見た夢と娘の強い希望から年が明けたらワンちゃんと縁組しようと決めていた。

その夢のことは去年ブログに書いたけど、保護犬たちの施設から辛い境遇にある犬を1匹引き取って飼うというものだった。夢の中で、その子を家族の一員として自分の子どものように大切に育てるということは、犬のためだけじゃなく私や私たち家族にとってはもちろん、宇宙的なレベルでも大切なのだと言われたのだった。

そのとき夢の中で引き取っていた犬はホワイト・ハイランド・スコティッシュ・テリアみたいな犬で、昔こっちで犬を飼おうと決めたとき私の欲しかった犬種だった。その犬種の犬を引き取るというよりも、そこに私の欲しい犬がいることを象徴しているみたいな印象を受けた。

それまでは次の犬も子犬のときから飼いたいと思っていたので、ロスト・ドッグ・ホームから引き取ることはまったく考えていなかった。子犬は難しいと聞いていたので。でもその夢を見た朝にムムが亡くなったから、単なる偶然だとは思えなかった。天からのメッセージのような気がしたのだった。

年明けにと決めたのは、モモとムゥが逝って、せめて年内だけでも喪中に服したかったことと、オーストラリアで最も捨てられるペットが激増してしまうのがクリスマスから新年のホリデー中だと聞いたから。

私はこの国に来てからずっとRSPCAという動物愛護協会をサポートしてきたのだけれど、そこから手紙を貰ったのだった。毎年サマーホリデーの期間中に(オーストラリアの新年は夏休み中なのよ)8万匹もの捨て犬や捨て猫が出てしまう。なんでもクリスマスに犬や猫を子どもたちにプレゼントしたものの、夏休みの旅行で泊まる場所に困って(オーストラリアも日本同様ペットお断りの宿泊施設が多いので)捨てていってしまうんだそうで…。捨てられた子たちを救うためのキャンペーンへの寄付を募るお知らせが届いていた。

だからホリデーから戻って来た私たちは早速、うちのワンちゃん探しに乗り出したのだった。そうして、オリー君という1歳半の♂のマルチーズ×クロスを見つけた。ちなみに「×クロス」とは雑種、この場合ならマルチーズと何かの雑種って意味デス。

早速アドプト(養子ならぬ養犬縁組)を希望する申込書を送ったのだけど、3日後にオリーくんのおうちは決まってしまったとの連絡を受けた。子どもたちはガッカリしていたけれど、オリー君、お家が決まって良かったね!

それからうちのダーリン♥ドギーを探すべく、毎朝ビクトリア州各地のロスト・ドッグ・センターのHPをチェックするのが私の日課となった。ダディンの方は毎日電話で問い合わせていた。

そうして遂に15日の金曜の朝に発見した! チャールス君という1歳♂のマルチーズ×クロスを。ネット上でチャールス君の写真を見せるや子どもたちもダディンも大喜び。このボランティア団体は電話で直接アポを取ることができたので、事務所が開くのを待ちかねてダディンが早速電話を。その日のうちにチャールス君と面会することになったのだった!

車を飛ばし、事務所でチャールス君との縁組希望を告げると、担当スタッフが連れてくるからケンネルの並ぶ裏庭で待つようにと言われた。外に出るや別のスタッフに声をかけられたのでチャールス君との縁組を告げると、「ああ、チャールスならこっちよ」と彼女が白い小型犬を取り出してくれた。かわいい、なんてかわい~の!?

「あれっ、でもチャールスって4歳だったかな?」と、ダディン。
犬舎の掲示板には、なるほど「4歳」と表示されている。

「チャーリー、4歳、♀、マルチーズ×クロス」
ん? メス???

訝る間もなく向こうから白い小型犬を抱えた別のスタッフがやって来た。どうやら「チャールス」と「チャーリー」と名前が似ているうえにどちらも「マルチーズ×クロス」と犬種まで似ていたために間違えられたらしい。

後から連れられて来たチャールス君の方が私たちが縁組を頼んだ犬だったので、その子と奥の芝生で対面した。はしゃぎ飛び回る子どもたち以上にチャールス君はものすご~く元気で大はしゃぎ。

「この子、大好き! この子、引き取る~!」と、メェはお散歩をさせてもらいながら宣言する。

だけど周囲からは犬の吠える声。犬舎に入れられた何十匹もの犬たちが「出して、出して、ここから出して~!」と哀しげに、不安げに吠えている。その声を聞いているのがもう堪らなかった。

1匹だけでいいのっ!?と、心が叫び始めていた。

兄弟や同じ飼い主からきたのではない成犬を2匹同時に引き取ってもいいものか?とスタッフに聞いてみた。と、芝生で引き合わせて問題がないようであれば大丈夫だと言う。

これも何かのご縁かもしれない。私はさっきのチャーリーちゃんの犬舎へ戻った。

でもチャーリーは4歳だ。友達が6歳の犬をロスト・ドッグ・ホームから引き取ったところ実は十数歳の老犬だったため、引き取ってから2年目に危篤状態になってしまったという話が脳裏を過る。また愛犬を失ってしまったら…と怯える彼女を間近に見ていたので、できるだけ若い犬を探していたのだった。4歳といっても、その年齢以上に年をとっている可能性もあるわけで…。

チャーリーちゃんは犬舎の奥で眠っていた。私に気づいて立ち上がったものの、来ようか、どうしようかと迷っているようだった。
「この犬はものすごくシャイだから」、とスタッフ。

それでも檻から出してもらってチャーリーちゃんを抱いた瞬間、この子だ!と思った。3年前に逝ってしまった、大好きなロリィちゃんに似ていた。その子は小さくて華奢で、ロリィはがっちりとおデブ犬だったのだけれども、なぜかロリィちゃんにそっくりだと思った。

芝生で2匹を引き合わせると、チャールス君は尻尾を振り振りチャーリーちゃんにすり寄っていった。2匹は喧嘩することもなく、一緒にじゃれていた。これなら大丈夫よ、とスタッフも言ってくれた。

それから縁組のための手続きをして、犬を飼育する際の一般的な話やチャールスとチャーリーに関する医学上の注意や情報を受けて、縁組金(ほとんどが医療上の理由でかかった実費)を払って、2匹と一緒にロスト・ドッグ・ホームを後にした。1匹だけ引き取った子を大切に大切に育てるつもりだったけれども、結局私たちは2匹を連れて家路に着いたのだった。

チャールスとチャーリーでは紛らわしいので、チャーリーはポーポーと改名した。どちらも捨て犬だったので、施設でとりあえず付けられた名前らしい。

チャールス君、ポーポーちゃん、うちに来てくれてありがとう。これから末長~く、どうぞよろしくお願いします!


2010/1/15
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