ひぇっ~、家が!!!

文字数 1,913文字

日本に一時帰国して戻ってきたら家が…ボロボロになっていた。

我が家が浸水してしまったことを知ったのは1週間前のことだった。その日は友達と久しぶりに新宿で会って、戻ってきたら夫がどぉんよりと出迎えてくれた。

「オーストラリアの家が…大変なことになっているみたいだ」、と。

なんでもその前夜にメルボルンでは豪雨があって、念のため我が家の様子を見に来てくれた義母が惨事に気がついたんだそうだ。

ガレージの隙間から水が流れ出しているのを不審に思った彼女が、中に入ってみたところ、家の中は一面水浸しで、足元を水が流れていた。そのときもまだ雨が降っていたので、階段や天井から水が流れ落ちてくるのを義母は雨漏れだろうと思ったんだそうだ。

ともかく私たちに知らせようと私の実家に電話をしてくれたものの、あいにく私は東京、ダディンは私の妹ファミリーと子どもたちを連れて出かけていた。私の両親は英語が不得手なため、夫が義母から我が家の水害の話を聞いたのは土曜の夜だった。

翌日、彼は保険会社に連絡を入れ、人の手配を頼んだ。ところがその日は日曜日。保険会社は動けないということで、レスキュー隊が稼働してくれたのは月曜の朝だった。そのときになって初めて嵐のせいで水漏れしていたと思われていたのが、実は2階のバスルームのパイプ部分から水が漏れていたことがわかったのだった。

そうして土曜日に義母が気付いたときには、1階の子どもの遊び部屋部分とダディンのオフィスの天井に穴があいてしまっていて、家の西側が浸水しているって話だった。けれど実際はダディンのオフィス部分の天井はほぼすっぽり抜け落ちて、子ども部屋の天井も半分は抜け落ちていた。1階はほぼ全部、2階もムゥの部屋やバスルームがある西半分はどこも水に浸かっていたのだった。

我が家の床は石の部分とカーペット部分でできているのだが、結局カーペットは2階の娘の部屋とライブラリー部分の床を除いて全て剥がされることになった。

そんなふうに聞いてはいたけれど、やはり百聞は一見に如かず。久しぶりに見る我が家は、想像していた何倍も酷かった。

天井の、聞いていた部分はもちろん抜け落ちて、カーペットの剥がされた床はコンクリートが剥き出しになっていて、無数の釘が針の山状態で突き出していた。とても危なくて歩けたものじゃあない。しかも釘は水に浸かってもう錆びているし…。刺さったら破傷風になっちゃいそうだった。こんな床で子どもたちが生活する様を思い浮かべただけでゾッとした。

床のそこかしこには、泥まみれになった縫いぐるみやら玩具、絵本、靴や洋服やらいろんなものが散乱していて、改めて驚愕してしまった。

そのうえBlower、業務用の乾燥器が何基も据えられて家を乾かしているせいで、ものすごぉ~く、うるさいの。ほとんど暴力的な轟音である。怒鳴り合わなければ、何を言っているのか皆目わからない。

これから、どうしよう…。

話を聞いたときには家がどんな状態でもここに住んで、ゆっくりと修復してゆこうと腹を括っていた。だけど、とてもじゃあないけど住めるような状態じゃあないんだ。

保険会社からは、剥き出しの釘がそこら中に突き出しているため事故に遭う危険性が高いから、家には戻らないようにと言われていた。それに配管工が水道管の修復を終えるまで水道は使わないようにとも。

水無しで生活はできないし…。だいたい、うちには日本で4歳の誕生日を迎えたばかりの息子もいる。今は長旅で疲れ切って車の中ですやすや眠っているけれど、たぶんムゥがこの空間に足を踏み入れたなら、その1時間後には今度は病院の救急診療所に向かわなければならなくなるであろうこと、請負いって感じである。

とりあえずお昼寝中の息子はそのまま寝かせておくとして、娘の方は義母と一緒にお庭に避難してピクニックランチを取ることになった。夫と私は汚れて転がっている物品を比較的被害の少ないファミリールームの床やテラスに並べ日干しをするというささやかな作業に取り掛かった。

だけどこの、そこかしこで雄叫びをあげるBlowerときたら…。この轟音の渦に揉まれていると、気が狂いそうになってくる。とてもここで今晩を越せそうにはない…。

結局この夜、私たちは保険会社が取ってくれた近所のビジネスホテルに避難することになった。避難場所があるってありがたいことだと、しみじみ思わされましたよ。

それにしても、保険に入っていて良かった、と思う。義母が気を利かせて我が家を覗きに来てくれて良かった。お陰で不幸中の幸いレベルの被害で済みました。

ああ、それにしてもそれにしても、これからどうなることやら…ですよ。


2010/5/1
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