切ないほどの、青 

文字数 906文字

娘のお迎え前にママ友たちと小学校の向かいにあるカフェでお茶をしていたら、メェのクラスメイトのオージーおばあちゃんがやって来た。男の子のおばあちゃんで、教室の前でお見かけすることはあるけれど話したことはなかった。小柄でちょっとふくよかな、優しそうな方である。

私は昨日から首と肩の筋肉痛に襲われてヘタっていたのでマッサージの話をしたところ、おばあちゃんの義理の息子が鍼師をしているからと連絡先を教えてくれた。そこからおばあちゃんは身の上話を始めた。

去年、息子さんが突然、40歳の若さで心臓発作を起こして、他界されたのだそうだ。

彼には3歳の息子と8歳の娘がいて、上の子の方は父親の死を未だに受け入れることができず苦しんでいるという。彼の奥さんは、そんな子どもたちのために自分ががんばるのだと、ひたすら奮闘しているのだそうだ。自分には子どもがいるから生きなければならない、がんばれる、と。

そのうえあろうことか、おばあちゃんのご主人も、息子さんが突然亡くなってしまったショックからか、その数ヶ月後に心臓発作を起こしたのだと言う。手術で一命は取り留めたものの、その8日後に今度は脳卒中を起こして、言語機能と歩行に障害が出てしまった。膝の手術をしたものの障害が残り、車椅子生活で、もう歩くことができないらしい。後2年で結婚50周年を迎えるのだけれど、それまで一緒にいられるかどうかわからない、と。

慰める言葉もなかった。何を言っても、足りな過ぎる気がして。

「ごめんなさいね、でも…誰かに話さずにはいられないんですよ」と、逆にそんな私たちを慰めるかのようにおばあちゃんは言った。

「息子はね、生まれたとき未熟児でね。ほんとにちっちゃなベイビーだったから、生きられないんじゃないかって、周りからは言われていたの。それがあそこまで生きたなんてね。息子はね、とても頑張ったんですよ」

子どもを先に失うってことは、どれほど…。

「そろそろ、終業の時間ね。行かなくっちゃね。私にもまだ、孫が待っていてくれるんだから」

おばあちゃんに促されて、皆で子どもたちのお迎えに向かった。

見上げれば冬の空は晴れ渡って、切ないほどに青かった。

2008年6月25日

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