ムム、ありがとう 2009/10/18

文字数 1,147文字

「Moomoo is dying」

明け方、ダディンの囁く声に起こされた。

驚いて飛び起きると、我が家の愛犬ムムが私たちのベッドの隣、自分のベッドの中で苦しそうに喘いでいた。

ダディンはムムを抱き上げて、私はその身体を撫でた。

頭の中にはモモの最期が蘇っていた。あのときのモモと同じ、ムムは確実に死にかけている。

苦しそうに粗い息を吐くムムの身体を撫でながら思った。後どれくらい、この子はこうして苦しまなくてはならないのだろうか?と。モモは明け方4時ごろ救急病院に連れて行って、亡くなったのは10時過ぎだった…。

ムムの身体を撫でながらマントラを唱えていた。私たちにしてあげられることはもうそれ以外あまりなかったから。

だんだんムムの呼吸が変わり始める。ビクンと痙攣のような呼吸が始まって―ムムがまさに死んでゆくのがわかった。

背後で寝ていた娘が起き出してきて、泣きながらムムにお別れを告げた。

「どうしたのぅ?」と息子も寝惚け眼で起きたとき、ムムが最期の息を吐き出したのがわかった。

ムムが死んでしまったからお別れを告げるようにと息子に告げた。彼が「バイバイ」と言ったとき、ダディンが言った。

「今、ムムの心臓が止まったよ」、と。

呆気なかった。これからどれくらい…などと案じたけれど、実際は10分、いやもしかすると5分とかからず、ムムは逝ってしまったのだった。

私たちは4人で泣きながらムムの亡骸を囲んでいた。

それからモモにしたようにムムを安置して、お花とお線香、水、ドッグフード、それにムムの好物だったタイニィ・テディのビスケットを捧げた。

毛布にくるまれベッドの中に安置されたムムは眠っているみたいだった。死顔というより寝顔、すごく安らかな顔だった。癌と戦う必要がなくなった今、ムムはなんだか若返ったようで、ほとんどパピーに見えた。

3年前にロリィ、先月はモモと相次いで愛する犬たちが逝ってしまったけれど、ムムだけは家族4人そろって送ってあげることが叶ったのだった。家で、腕の中で逝かせてあげることが叶ったのだった。

ムム、どうもありがとう。私たちのところに来てくれて、おかげでたくさん、たくさん喜びをもらいました。どうか安らかに。うちのお祖母ちゃんやダディンのお父さん、ロリィやモモがお迎えに来てくれるから、大丈夫だからね。


こうしてブログに記し、改めて思ってしまう。ムムを、あの子の好きだったドッグビーチに後何回連れて行けるかなと思ったけれど、結局それは叶わなかった。昨日一緒にChurch Streetに行ったのが、最期の散歩になってしまった。あのときは思いもしなかったけど。

ジンセイはやはり儚い。だからこそ今日はこの仏教の言葉で締めたいと思う。

目覚めて生き、目覚めて死ぬ。

ありがとう、ムム。


 2009/10/18
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