ムゥの悪夢

文字数 1,162文字

2歳の息子がこのところ悲鳴をあげ、お昼寝から目覚めるようになった。

どうしたの? と尋ねれば、恐~い夢を見たと言う。

自分もつい最近、悪夢に魘された身。たかが子どもの悪夢などと軽視するわけにはいかない。

そのうえムゥは、私が来てからも泣き叫び、落ち着くまでゆうに3分間はかかるほどなんだ。ちなみにこのカップヌードル待ち時間の定番は、アナログ時計の秒針を前に計ってもらえば意外に長いことに驚かれるかもしれないが、2歳児の悲鳴が鼓膜をつんざくとき、その長さたるや…。

落ち着いてからどんな夢を見たのかと聞いてみる。ムゥのたどたどしい表現から浮かび上がってくるそれは毎回、怖いくらいに同じテーマだった。

ムゥとメェ、ダディンと私の家族4人で2階にいる。そこに突然、侵入者が現れる。侵入者は「えいごのひと」で(息子の世界観は日本人とオーストラリア人から成り立っているのだが、ヨーロッパ系は皆英語の人と表現されている)、「いじわるな」「おとこのひと」だ。その「いじわるな」人が私たちを相手に「けんかをはじめる」。ダディン、マミィ、メェと次々いなくなって、最後にムゥ一人が残される―

そうして「イジワルなエイゴのヒト」があわやムゥに襲いかかるところで―どうやら目覚めるらしい。

そうね、典型的悪夢ね。

けれどあまりに何度もムゥがその夢を見るので、しかも毎回毎回テーマも登場人物もセッティングもストーリィ展開も同じなので、私も次第に気になってきた。

要は、家に誰かが侵入して、家族全員が殺られちゃうって…

………
なんだか…不吉だ、不吉過ぎるだろ。

ムゥったら、どうしてそんな夢を見るんだろうか? 彼の日常で、そんなドラマチックな恐怖を煽るようなどんな事件があったというんだろう? 引き金は何? テレビ? 本? 

でもうちじゃあ英語圏のオーストラリアにあって、子どもたちに少しでも日本語力をつけてもらいたいと、こっちのテレビなんて殆ど見せていないのになぁ。ムゥの見るものといえば「機関車トーマス」とか「お母さんと一緒」とか子ども向けの、のほほ~んとしたものばかりなのになぁ~

友達に相談したら、息子の深層心理に潜む不安や恐怖を暴き癒すべく、幼児対象の心理学者に連れていくようにとアドバイスされた。別の友人は、ネガティヴなスピリットの攻撃かもしれないから、ホワイトセージで家を清めて盛り塩をするようにと勧めてくれた。ダディンに相談したら、鼻で笑われた。

とりあえず私は「意地悪な人は絶対に来ない」と強く請け合う一方で、念のため夜の戸締りは厳重にしている。

それにしてもあれほど魘されているくせに、その夢を夜は絶対に見ないっていうのはどうしたわけだろうか?

いずれにしてもこれからは「安らかに眠れるよ~」と暗示をかけてからムゥを昼寝に送り出すことにしよう。

 2008/8/28
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み