子牛に子山羊にショーバッグ

文字数 2,860文字

今年もロイヤル・メルボルン・ショーに行ってきた。ビクトリア州農業協会The Royal Agricultural Society of Victoriaの主催する伝統的なフェスティバルで、毎年春休みに (そう、ここは春なんです~) 開催されるの。

元々農業のお祭りなので、にわか遊園地やライブミュージックとかのエンタティンメントにくわえて、馬や羊などのファームアニマルや芋掘りとか牧歌的なイベントも盛りだくさんである。なんちゃって乗馬(大きなテント内で手綱で引かれたポニーに乗るだけなので)から絶叫マシーン、手作りクラフトのマーケットにグルメな食べ物から素朴な田舎料理、有機栽培の美味しい食品展、農場の動物たちや、犬や猫のペットパビリオンなどなど。

だけど1番人気は、小さなお宝(?)の詰まった福袋ならぬ「ショーバッグ」だろう。ちなみにうちの息子ムゥなど、このバッグを1年も前から楽しみに待っていた。^ ^;  そんな息子の気迫に押され、この日は夫婦で仕事を休んで出陣デス。10日間ほど開催されるものの、週末はえらく混んでしまうので。ま、オージーの「めちゃ混んでた~!」は、東京とかと比べれば大したことはないのだけれども…。

それでもメルボルンではたぶん春休み1のファミリーイベント。子どもたちのために仕事を休んで来られる親も多いそうだ。友達の会社など、小学生以下の子どもがいればこれを理由に正々堂々と有給取ってお休みできるのだと言っていた。逆に取らないと「子どもを顧みない駄目パパ」の烙印を押されてしまうので、彼も無理やり休みを取ったとか。いやぁ、オージー文化デス。

あいにく当日は雨でも降ってきそうな曇り空だった。くわえて娘のメェの体調が今一つだったので、今年はとっととこなして早く帰ろうってことになった。まずは屋外のアミューズメント・エリアを覗く。ここを制覇しておかないと、雨が降り出しても「やだ~まだ帰らないよ~トーマスに乗ってないよ~」とかムゥに号泣されて、雨の中機関車乗り(ちなみにミニトレインなので屋根もない)なぁんてことにもなり兼ねない。

ティーンネイジャーで賑わう絶叫マシーンの並ぶエリアには脇目もふらず、機関車トーマス(もどき)やダンボや車の乗り物、ジャンピング・キャッスルが並ぶエリアへ小走りする子どもたち。「お腹痛いよぅ」とか言っていたメェもいつのまにか元気になっちゃって、ジャンピング・キャッスルや巨大滑り台で飛び回っていた。ムゥはトーマスもどきのミニチュア機関車に、メェは大好きなポニー乗りにハマっていた。

それからメェのお目当てファームアニマルのパビリオンへ。子羊、子山羊、子豚、子馬に子牛、子犬やうさぎ、ニワトリ、アヒル、果てはラクダにアルパカまで。農場牧場にいそうな動物たちが勢揃いしていて、かわいいのなんの。子山羊や子羊を撫でたり抱いたりできるコーナーもあって、二人ともさっそく子山羊を抱かせてもらっていた。

そういえば去年メェはチャボを抱かせてもらって、「かわいい~! チャボ飼いたい~!」と大騒ぎだったんだ。そ…んなかわいいもんでしょうかねぇ、チャボ? いやぁ、人の趣味っていろいろですぅ。

ところで去年はステージで牛の出産ライブをやっていてギョッとさせられた。今年は気づかなかったけど、やっていたのかなぁ? 確かに子どもが「生」を学ぶ素晴らしい機会だとは思うのだけれど、かなり生々しかったですぅ。

さて、ランチは農家の奥様方が主宰するカフェで伝統的ファーム料理を。今年もミートパイやフィッシュ&チップス、スコーンなどを頂いた。

ランチの後はアロマなマッサージオイルやクリーム、有機栽培のソープやキャンドルなんて癒し系グッズから霊能者のサイキック・リーディングのブースまでもが並ぶ、マインド・ボディ・スピリット・フェスティバル系のパビリオンへ。つーか、その横を通って、メェお待ちかねのジャガイモ堀りのコーナーへ。私的には癒し系パビリオンでマッサージや霊視なんかをしてもらいたかったけど、なにぶん今日の主役は子どもたちだものね。それにしてもこういうイベントにまでスピ系が並ぶなんて、いやぁメインストリームになったもんデス。

ジャガイモ掘りの方は農場パビリオンにあった。屋内なので、大地に根を張った芋を抜けるわけではなくて、バーク混じりの土の中に埋められた芋をシャベルや手で掘り出すだけ。それでも子どもたちは歓声を上げつつ30分は熱中していた。芋を掘り出しては、また埋め。掘り当てては、また隠し―。そうして掘った芋のうち1、2個を選んだら、向こうに展示された芋の展示場から自分の芋の種類を調べたり、芋判作ってスタンプアートしたり。帰りには記念にお芋を二つずつもらっていた。

さて、今回は早く帰ろうと決めていたのに、既に4時。息子が1年間も待ち続けた待望のショーバッグがまだだった。ムゥは去年15ドルでトランスフォーマー(もどき)の詰め合わせバッグをゲットして以来、ほんと~に1年間この日を心待ちにしていたのだった。

実際「メルボルン・ショーといえばショーバッグ」というくらい、ここの売りである。中身は、大人からすればなんてことないがらくた(ちょっと遊ぶと壊れちゃうような、やたらと耐久性の低いプラスチック製のおもちゃとか、1週間も使うとファスナーが壊れちゃうような儚いデイパックとか)が多いんだけど、子どもたちにすればビニルのバッグに積められた夢の袋だ。

ショーバッグのパビリオンは、夢の袋を求めて躍起になる子どもたちを連れた家族連れで鮨詰め状態だった。この出だしに「オージーの混んでいるはさほどじゃない」なんて書いたけど、ほんと混んでた。ぎゅうぎゅう詰めで歩けない、動けない。

ムゥなど、ただでさえ小さくてブースが覗けないのに、ショーバッグが見えずパニックに。見兼ねたダディンが肩車をしてあげていた。他にも子どもを肩に背負って疲れ果てた形相の哀れなダディン族がそこかしこに。^ ^ でもって警官が「スリに注意してくださ~い!」とか怒鳴っているし。こっちも慌ててバッグを押さえたりして。子どもとはぐれないようにガシッと手も握ってなくちゃあならないし。いやぁ、汗だくでしたよ。

ようやっと子どもたちが数あるショーバッグの中から一つを選んでくれたときにはホッとした。去年、保安官セットを買ったメェはインディアンとカーボーイのバッグを。ムゥは今年もトランスフォーマーを狙っていたにもかかわらず、出ていなかったのでマシンガンのバッグを。それにしても母親はポニーのぬいぐるみとかプーさんの持ち物バッグとかラブリー系を勧めていたのに、二人とも銃入りのバイオレント系を選んでくれちゃって…。

そうして書きながらハタと思ったのだけれど、「混んでいた」と言ってもパビリオン自体には待たずして入れたのだから、まだまだだったのかもしれないなぁ。だって日本の「混んでいる」だとたぶん入るまでにも長蛇の列、ですよねぇ。


   2010/9/23
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み