思いもよらず、法王のパブリックトークへ 

文字数 1,717文字

講義4日目はオディン参加の日。私の方は子どもたちを連れて遊園地にでも行こうと思っていたのだけれど、急遽ダライラマ法王のパブリックトークに参加できることになった!

そのため午前中はぶらぶらとモーテル周辺の観光(?)でお茶を濁すことに。なにしろここからシティに出ようと思ったら電車とフェリーを乗り継いで往復2、3時間は覚悟しなければならないってことは、前回のシドニー観光でしっかと学んでいる。2歳児と6歳児連れで、パブリックトークの開演4時15分に間に合わせるためにはシティは無謀すぎる。何より会場でムゥが雄叫びを上げて駆け回ったりしないように、しっかりとお昼寝もさせておきたいところだし。

実はダライラマ法王のツアーが発表されたときには、今回はパブリックトークの開催もなく仏教経典の講義だけになると言われていた。それがいつのまにかパブリックトークが企画されていたことを私は講義初日に知ったのだけど、チケットはインターネット販売だけだと言うし、パソコンも持ってきていなかったし、そのうえ5時15分から始まるということで、2歳児連れでは無理だと諦めていたのだった。

それが昨日突然、開演時間が一時間早くなって、チケットも会場で販売されるとアナウンスがあった。ダライラマ法王の来豪ツアーに参加するために家族全員でシドニーまで来たのだ。この際、子どもたちも一緒に参加したいと思った。オディンはムゥ連れで参加するなんて恐ろしすぎると二の足を踏んでいたけれど、私は即チケットを買ってしまった。メルボルンからシドニーへ遊びに来ていた友達ファミリーも講演に行きたがっていたので、彼女たちのぶんと7枚を。

早めのランチとお昼寝を済ませ、トーマスのリュックに子どもがぐずったときに使う賄賂用のジャンク菓子をめいっぱい詰め込んで、メェちゃんとムゥくんの手を引き、2階建て電車に乗った。行き先はさておき二人とも電車の2階席に今日も大喜びだ。ああ、子どもって純粋単純で、なんてありがたいんだろう。

電車の中で一緒に行くことになっていた友達ファミリーと偶然会った。友達も3歳の息子を連れているので、ますます賑やかになる。しっかとお昼寝を済ませてきたムゥは元気モリモリである。講義に参加していたオディンとは例のコーヒーショップの前で落ち合った。

子連れであることに気後れと後ろめたさを感じていたものの、思った通り、講義と違って小さな子どもたちの姿も目立つ。同類の多さにほっとした。

ほぼ時間通り公演は始まって、ほぼ予想通り2分とおかずにムゥが騒ぎだした。

仕方ないので私はムゥを抱え、早くも撤退することに。ダライラマ法王公聴参加者の、たぶん最短記録に挑戦できるかもしれないなどと思いつつ会場を出ようとしたら、意外にもムゥが大反撃を始めた。どうしてもここにいたいと言い張った。

結局、壁際で警官やセキュリティスタッフ、ボランティアスタッフなんかに混じって立ち聞きした。ムゥにはモーテル近くの韓国グロッセリーで買った「おっとと」を与えて。食べている間はおとなしくしていてくれるので有難い。立ち見のお陰でダライラマ法王のお姿もよぉく見える。

この壁際一帯は子連れ聴衆の溜り場になっているようで、ときおり目の前を里の行に励む親たちが横切ってゆく。赤ちゃんがハイハイでものすごぉい速さで足元を通過していったと思ったら、太めのダディが息を切らし追いかけてきた。気の毒に…。

ムゥの「おっとっと」に気づいた幼児がやって来て手を伸ばすこともあった。ムゥは、それでもしぶしぶ分け与えていた。目下のところ2歳児の息子もこうして「シェア」することを学んでいるんだ。子どもなりにがんばっているんだなぁ。

ふと警備のスタッフやボランティアスタッフの多さに気がついた。ボランティアのスタッフなんて彼ら自身チケットを買っているはずなのに、なんて偉いんだろう。思えばこのためにみんながんばってくれているんだなぁ、としみじみしてしまう。

身体をこわしていた友人はその夜、幸運にもヒーリング・ラマ(そんな僧侶がいるとは知らなんだ)から祈祷を受けることができて、すごく喜んでいた。

私たちも嬉しく、家路に着いた。

2008年6月14日



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