チャールスとポーポーの海デビュー

文字数 1,761文字

愛犬チャールス君とポーポーちゃんを連れて、ドッグビーチに行ってきた。

手綱を離せるので犬たちは好き勝手に駆け回ることのできる、ドッグ・ラバーに人気のビーチである。お天気が良いせいか、いつも以上にたくさんのワンちゃんが走り回っていた。

犬とビーチが大~好きな娘は、ポーポーとチャールスを連れてここに来るのをすごく楽しみにしていた。私もこの子たちが海を見てどんな反応を示すのか、密かに楽しみだった。大喜びでキャンキャンばしゃばしゃ波打ち際を駆け回るのか、他のワンちゃんたちと元気に遊んでくれるかなぁ~とか。

この子たちを飼って2週間ちょっと。いったいどれくらい社交的なのか、どれくらいトレーニングされているものか、皆目わからない。だからまずは手綱を引いたまま波打ち際を歩くことにした。

するとチャールスときたら…。尻尾を振り振り駆け寄ってくれる社交的なワンちゃんたちに向かって、唸るや吠えるや、即戦闘態勢に入ってしまったではないかっ!? うわぁ、あんなデカイ犬にまで!? 食われるぞ、コイツ…。

これで手綱を離した日には、他のワンちゃんに挑みかかってしまうか、本人溺れるか、行方不明になってしまうだろう。やむなくチャールスはフリー・ウォークを断念することに。手綱を引いたまま浜辺を歩き続けた。そういえばロスト・ドッグ・ホームのスタッフがこの子たちをトレーニングスクールに入れるようにって言っていたなぁ…。

けれどポーポーちゃんの方はおとなし~く歩いてくれたので、思い切って手綱を外してみた。しかしながらポーポーは思い切る必要もないほど何の変化も、無し。海と大勢のワンちゃんたちが恐いようで、尻尾を下げて緊張気味におどおどと、ひたすら私の足元をついてくるだけ。娘が一緒に波打ち際を走ろうと誘っても、恐がって海にも入ろうとしなかったし。

海を恐がっているのはチャールスも同じだ。娘に手綱を引かれ波打ち際まで連れて来られると、4本の足を突っ張って断固拒否。隙あらば逃げ出そうとしていた。

私たちはビーチに連れて来るのを楽しみにしていたのだけれども、どうやら2匹にとってはもはやストレスでしかないらしかった。明らかにチャールス君もポーポーちゃんも海は初めてだ。

思い返せばオーストラリアに移住してから飼ったムム君とロリィちゃんは、パピーのときからビーチを走り回っていたので海が大好きだった。けれど東京で育ったモモちゃんは海が苦手だった。日本からこちらに移って初めて海に連れてきたときのモモちゃんが、ポーポーちゃん同様の反応をしていたことが思い出された。慣れるまで暫く時間がかかりそうだ。

海に向かって突進したい子どもたちとは明暗を分け、ひたすら海に背を向けようとしているチャールスとポーポーを見ながら思った。

この子たちはどんな犬生を歩んできたんだろう?

たとえば食べ物の好み一つとっても、1歳のチャールス君は、見た目は成犬とはいえハートは子犬だから、かなりフレキシブルに好奇心も旺盛に、出されればたいていのものは平らげてしまう。でも4歳くらいと診断されたポーポーちゃんの方は、食べない物もたくさんある。人間でいえば30歳近く。嗜好もライフスタイルも出来上がっているんだろうなぁ。

思えば私も30歳でこの国に移住して以来、ラーメンが食べたい、紀州梅のおにぎりがとか納豆と海苔が…などと慣れ親しんだ日本の食品を恋しがっている。ポーポーも好物の食べ物とかあっただろうに…。会話ができないので本人に聞き出せないのが不憫である。

そういえば以前ABC(オーストラリアの国営放送)で、犬を霊視してコミュニケーションを取ることができるという霊能者のレポートをやっていた。ポーポーちゃんの霊視を霊能者に頼む気はしないし。

結局、毎日の生活のなかで少しず~つ試しながら観察しながら、この子たちを知っていくしかないんだろうなぁ。そうやって、これから絆を築いてゆくんだ。

一方この子たちがこれから私たちとの暮らしの中で新しく好きになってくるものも出てくるだろう。ビーチもそのうち好きになってくれるかな?

結局チャールスは娘に引っ張られて嫌々2回、数十秒ほど海に入った。ポーポーの方は足をちょこっと濡らしただけで終わり。チャールス君とポーポーちゃんの海デビューでした。


2010/1/31
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み