Qiの夜に見たモモの夢

文字数 1,427文字

Qiのオープンディに行った夜、たくさん夢を見た。もともと私は毎晩3つ4つ夢を見るような夢女なのだけど、この夜はいつも以上に生々しくて鮮やかな、しかも悪夢ばかりを。

2時ごろに見た、ダディンと暗い道を歩いていて、人をマインドコントロールすることに生きがい(?)を感じているサイコ男に襲われる夢では、目が覚めたときには全身、恐怖で縮みあがっていた。心臓がバクバク鳴って、ほんとうに物理的に胸の真ん中が刺されるように痛かった。ああいうスピ系のイベントでは霊も集まってくるというけれど、何か悪いものでもついて来てしまったんだろうか?と訝ってしまったほどで…。

明け方に見た夢では、私はイベント会場みたいなところの屋外にいた。霊界の低いところにでも行っていたのか、やはり薄暗くて、夜だった。人混みの中、正面のビルから見知らぬスポーツウェアを着た白人女性が4、5匹の犬の手綱をひいて駆けてきた。そのうちの1匹、小さな白い犬の眼が、血が出ているみたいに真っ赤だった。私はとてつもなく哀しくなって、暗~い気持ちにとらわれ、思わず目を逸らした。

翌朝、瞑想中にふっと夢のことを思い出すや、その犬はモモちゃんだったのだと気がついた。モモが霊界で哀しんでいるような気がした。9月に逝って、霊界で目覚めて、すると自分が未だに犬で、しかも知らない女性に飼われている。またもや犬として扱われていることに失望して、哀しんでいるのではないか、と。

モモは、たぶん人間になりたい犬だった。他の犬にはまったく見向きもしなかった。ロリィやムムといるよりも、私たちといることを好み、犬としてではなく子どもたちと同じように扱われたがっていた。だけどモモの望むようには扱ってあげられなかった。モモのことを思うと、今も胸が締め付けられる。

この日は近所のチベット仏教寺院で法要があって、先週亡くなったムムの冥福を祈ってもらうことにしていた。寺院でムムとモモの冥福を祈り、思った。

ムムもロリィも自然に逝ったけど、救急病院に運ばれたモモは、獣医からこれ以上延命をしても苦痛を長引かせるだけだから楽にしてあげるようにと強く言われて結局、安楽死をさせたのだった。酸素室から出されたモモちゃんをダディンと二人で抱き、最期の注射を打ってもらった。

もしかしてそのせいで、死が早くきてしまったことで、モモは混乱してしまったのかもしれない。ムムやロリィのようにスムーズに移行できなかったのかもしれない、と。

それが思い過ごしで、夢が単なる夢に過ぎないことを願いつつも法要の後、尼さんに尋ねてみた。

そういうことは私たち人間にはわからないから、ただ祈りなさい、と彼女は言った。祈りは決して邪魔にはならない、そして必ずどこかで効くから、と。そうして何か徳を積むたびモモの冥福に捧げて、功徳を廻向すると良い、とも言っていた。

確かに、私にはもう祈るくらいしかできることはなかった。モモちゃん、ごめんね。

その後、祖母に抱かれた若いころのモモちゃんの写真を見つけた。祖母もまだ元気でしゃんとして、モモもふかふかと愛らしかった。夢で見た赤い眼をした白い犬のイメージがあまりに強烈にモモちゃんに重なってしまったため、それを拭おうと写真を飾った。モモだってそんなイメージで私の心に残りたくはないはずだ。

写真の中のモモはふかふか真っ白で、真っ黒な丸い目でこちらを見つめている。とてつもなく愛らしい存在。大好きな、大切なモモちゃんだった。


 2009/10
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