ディズニー氷上のミュージカル

文字数 1,986文字

6月末、今週からビクトリア州は冬休み。待ちかねていたホリデーに子どもたちは大喜び。息子のムゥなど毎晩ベッドに入るたび「明日もまだホリデー? 明日は何するの?」と聞いてくる。ワクワクを確認してから夢の世界へ。

7月初め、大安の今日はディズニーの氷上ミュージカル「Disney On Ice」に行ってきた。

4歳のムゥはこの4月に日本に帰ったときディズニーランド・デビューを果たして以来(実はベイビーのときにも行っているのだが本人、当時の記憶はすっかり失くしている。まあ、いずれにしても大半は授乳室で過ごしたのだけど…)、大のディズニーファンになった。今日の「ディズニー・オン・アイス」も、良くわからないながら「ディズニー」と言うだけで非常に楽しみにしているのだった。

一方、メェの方は今一つ気がのらない模様。というのも、彼女の中では「ディズニー=プリンセス=幼稚園児の世界」って図式が出来上がっているせいで、8歳のプライドがどうにも許さないらしかった。

それでもミュージカルへのお出かけはやはり嬉しいようだ。張り切ってワードロープをひっかき回し、赤いワンピースを選ぶ。赤いコートを羽織って、足元は黒いスパッツに茶色いブーツ。私がこの間マインド・ボディ・スピリット・フェスティバルのお土産にあげたクリスタルのペンダントも、おしゃまにつけている。でもって頭には「ポケモン」キャップ。

「どうして帽子かぶるの? 室内だから帽子なんて要らないよ。それにせっかく可愛いチェックのリボンが見えなくなっちゃうのに…」と尋ねれば、一言。
「だってわたしはディズニーファンじゃないから」

なるほど、そういうことか。どうやら彼女は自らのアイデンティティとレジスタンス精神を示すため「ポケモン」の帽子を被ることにしたらしい。そのマインド、サイコロジーがかわいくて、思わず笑ってしまったら、
「なんで笑うのッ!?
いや、バカにしたわけじゃなく、可愛くて、つい…。

「ディズニー・オン・アイス」にメェを連れて行くのはこれで3回目である。初めては娘が3歳のときで、その翌年4歳のときにも行った。あのころオーロラ姫とか人魚のアリエルとかに夢中だった彼女は、ピンクのプリンセス・ドレスを着て会場に臨んだものだった。その娘がディズニーは恥ずかしいと言って、自らのアイデンティティの象徴としてポケモンを黄門様の印籠のごとく掲げているんだ。う~ん、感慨である…。そのステイタスがポケモンってのが愛らしいけど。

さて、会場は小さなシンデレラや白雪姫、ピンクの妖精、トイ・ストーリィのキャラクターなんかに扮した子どもたちで溢れていた。ちょっと得意顔で大いに嬉しそうな可愛らしい子どもたちの間で、頑としてポケモン・ハットを被り続けるメェ。

ショーが始まる前にフードバーでイカリングやフィッシュ&チップスなんて、いかにものスタンドフードを買って立ち食いランチをした。メェはあっという間に平らげてしまったけれど、ムゥは嬉しくて、とてもランチどころではない。キョロキョロと周囲を見回すばかりで、フライドポテトをやっと3本だけ食べた。

それからお約束のディズニー・ショップへ。ムゥは瞳を輝かせ「カリブの海賊」の剣(もちろんプラスチック製)を買ってもらう。

一方メェは、来る前から主張していたように8歳になった今、もうディズニーキャラで欲しいものは何もないから、代わりに明日シティでDVDを買ってもらうんだ、そう。で、何のDVDを買いたいのかといえば「ドラえもん」。3月に日本の映画館で見た、人魚の「ドラえもん」ムービーを買いたいのだそうで、^^;

そうこうするうちドアが開き、会場へ。アイススケートのミュージカルなので幕もなく、ミュージカルの舞台というよりはスポーツ会場である。

それでも会場が暗くなってスポットライトが降りるや子どもたちのテンションも上がり、拍手喝采。ムゥも、あんなにブーたれていたメェまでもが瞳をキラキラさせて身を乗り出している。とりわけムゥは、彼のお気に入りのキャラクター「眠れる森の美女」の魔法使いマレフィセントが登場するや大興奮。小さな両手を何度も何度も合わせて、拍手を送っておりました。


その夜、寝る前にムゥは「明日もホリデー? 明日は何するの?」と尋ねる代わりに、一言。
「今日は、サイコー!」

そ…んなに楽しかったのね、良かったね、ムゥ。

メェまで、
「マミィ、今日のお魚のフライはね、あれは今まで食べたお魚の中で1番おいしかったんだよ。おいしくて、あっという間に食べ終わっちゃったんだよ。また食べたいなぁ」

え、あの魚のフライが…ですか? ほんとに…!? 私には、なんてことないスタンドフードだとしか思えなかったけど…。

やはりディズニーは子どもたちに夢を与えつづける永遠のマジカル・ファンタジーランドなのでした。


2010/7/1
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み