小さな心に言霊パワー

文字数 1,416文字

子どもはときにドキッとするほどスピリチュアルな発言をすることがある。

たとえば娘は3歳にもならないころから、食べ過ぎに喘ぐ母親を諭したものだった。

「ああ、また太っちゃう」などと(食べながら)口走る私に、
「ママ、そんなこと言っちゃダメだよ。太っちゃう、太っちゃうって言ってると、ほんと~に太っちゃうよ」
と、母親のゆく末を真剣に案じているかのような表情で言った。幼児特有の舌ったらずな声音で、茶色い目でこちらを見上げて。

そのたびハッとさせられたものだった。自らの現実をつくっているのはあなた自身であると、幼い娘から諭されたような気がして。

その娘も小学校が始まってから毎朝のように「学校に行きたくない」と言うようになっていた。「どうして?」と尋ねれば、「うちで弟と遊んだり、DVDを見ていたいから」

まあ、即脚下の理由ですね。ゆえに諭したり、励ましたり、話題を変えてみたり、笑わせてみたり、おやつで釣ったり。あの手この手で宥めすかしながら学校に送り出していた。

ところが今学期、親友が転校してしまうと「学校に行きたくない」がもっと切羽詰まったものになってきた。

結局、私は言ったのだった。
「そんなに学校が嫌だ、嫌だって言っていたら、本当に嫌なことばっかり起こるようになるよ。メェ、ママに言ってくれることがあるでしょう。太る、太るって言っていると本当に太っちゃうよって」

以来娘は学校に行きたくないとは一切言わなくなった。

たぶん心の中で、自分が学校に行きたくない行きたくないって言っていたから、行きたくないようなことが起きたんだ。それで親友が転校してしまったのだろう…。などと反省したのに違いない。ごめんね、メェ。

もちろん、親友の転校は彼女のせいではない。なのに、そう思わせる発言をしてしまったことには後ろめたさを感じている。

だけど言霊の力というのは絶対にあると思うのだ。

だからこそ営業でもカルト宗教でも心理セラピーでも、コミットメントとかアサーティヴ宣言が推奨されるんじゃなかろうか。「自分は意欲的な人間である」と公言しつづけていると、次第そのように行動し始めるようになると行動心理学の本でも読んだわ。

毎朝起き抜けに「学校に行きたくない、学校に行きたくない」などと言っていたら、たとえ最初はジョークで言っていても、そのうち本当に、ものすご~く行きたくなくなってくるかもしれない。そうして実際学校に行っても「ああ、やっぱり学校って…」と「行きたくない理由」ばかりが目につくようになってくるだろう。

けれど「学校に行きたくない」って気持ちを単に抑圧してしまったのでは結局、何の解決にもならないわけで。それが次第に雪だるま式に膨れ上がって、あるとき切れて、ほんとうに不登校になってしまうかもしれないし。そんな事態はなんとしても避けたいわけで…。

学校を終えて帰ってくる娘は以前より明らかに苛立っている。弟に八つ当たりをしたり、がみがみ小言を言うことも増えた(って、もしかして私のマネですか?)。

せめても学校が終わってからは、の~んびりと楽しく遊ばせてあげたいのだけれども、ホームワークの多さになかなかそうも言っていられない。ダディンと私はこのところ「どうしたものか?」モードで、とりあえずは娘の動向を見守っている。親が神経質になっては、子どもはもっと不安定になっちゃうだろうしなぁ。

いやぁ、やはり子育ては大変、一筋縄じゃあいきませんねぇ。

 2008/8/26
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