憧れの過去世退行催眠(もどき?)

文字数 3,307文字

あのブライアン・ワイス博士から(本人ではなくて)トレーニングを受けたという催眠療法士の過去世退行催眠ワークショップに参加してきた。

ワイス博士は『前世療法』で知られるアメリカの精神科医で、日本でも多くの著書が翻訳されている。私も博士のデビュー作(ていうのかな?)、患者の一人が退行催眠で水恐怖症の原因を探るうちに幼少期の記憶を飛び越えて紀元前のエジプトへ退行してしまい、当時の記憶を語り始めてから恐怖症が治ってしまった!?という『前世療法』(「MANY LIVES, MANY MASTERS」)に魅了されて以来、彼の著書はほとんど読んできた。

自分も前世退行催眠を受けてみたい~!と当時は願ったものだけど、アメリカは遠い。あれから20年が経って、ワイス博士系の過去世退行催眠を試すチャンスが遂に巡ってきた!というわけデス。まあ、博士ご本人ではないうえに、個人セッションでもなくてグループなんだけど。それでも胸を高鳴らせて参加してきましたよ。

ワークショップは3時間ほどで、十人くらいのグループだった。療法士のTさんは退行催眠について簡単に説明した後、さっそく皆を催眠へ誘う。

まず全身がリラックスしてゆくようにと誘導し、それから自分の家を正面からイメージするようにと言われた。その屋根に乗って、周囲を見渡すように、と。そのまま家の裏手に回って、空を仰ぐようにと誘導は続く。日が昇り、日が沈み―。夜空の中を自分の身体がぐんぐんと上昇してゆく。昇って、昇って―。今度はぐんぐんと下降してゆく。ぐんぐん、ぐんぐん、地面にぐいと着地して―。

「さあ、何が見えますか?」

はいぃ? 唐突に聞かれて、戸惑った。

「ご自分の足元を見てください。何か履いていますか? どんな足ですか?」

前世、もう始まっていたんですか…。

思わず混乱してしまった。てっきり「では今から私が数を十数えると、あなたは前世に戻っています」みたいな誘導が入るのかと思っていたうえに、思いのほか誘導の展開が早かったから。

早くもドロップアウトしてしまったのかと戸惑いつつ暫く待ってみたものの、Tさんからはもう指示も誘導も入らなかった。ただα波を誘うべく「いかにも」のBGMが流れるばかりで…。どうやらあれで前世への誘導は完了してしまったようなのだった(焦っ)。

どうしようか…。だけど、このまま、ただぼんやりしていても、暇だし…。参加費にかけたお金ももったいないし…。

先程Tさんが自分のハイヤーセルフに何でも質問をしなさい、と言っていたことを思い出して、執筆のことを尋ねてみた。

と、群衆に囲まれ広場に立つローマ兵(って気がした)の姿が見えた。このローマ兵は、以前瞑想をしているときに突如出てきたビジョンだったのだけど、今回は「36」という数字も出てきた。その人は36歳で亡くなったようだった。

1回目のセッションが終わると、療法士のTさんが皆に「何が見えました?」と尋ねた。でも2、3人の方が張り切って答えただけで、他の方はし~~~ん。皆さん、腑に落ちないと言う顔をしてらした。そうよねぇ、なにぶん誘導の時間、短かったもんねぇ。

「では方法を変えて、またやってみましょう」とTさん。2回目の誘導は全身リラックスもほとんどなく、なんとも~っと短かった。^ ^; 

森の小道を歩いてゆく自分をイメージするようにと言われ、その道沿いに小石が3つ落ちている。拾い上げて裏を見れば「Deeper」(もっと深く)と刻まれている。二つ目を拾い上げれば「Deeper」(も~っと深~く)。三つ目も「Deeper」(も~っと深ぁ~~く)。そうして階段を下り、ドアの前へと導かれ、ドアを開けて―

「さあ、何が見えますか?」

……

それでも目を閉じてBGMに耳を傾けていたら、ふいにバロック調の身なりをして、ブラウンの長髪を後ろに束ね、2階の窓辺に置かれたデスクに向かって羽ペンを動かしている若い西欧男性の後ろ姿が見えた。

それから唐突に場面は教会の中へと移り(カソリックって気が…)、またもや「36」という数字が現れた。この人もいろいろうまくいかなくて36歳で亡くなったらしかった。なんだか喉と胸のあたりに大きな塊みたいな哀しみが突き上げてきた。16世紀末とか17世紀ごろのフランスかベルギーだって気がした。

3回目の誘導では、寺の本堂で護摩を焚く仏教僧の後ろ姿。お寺の本尊や、めらめらと上がる炎が鮮やかに見えた。

その仏教僧はくるりとこちらを振り向くと「小乗」ではなく「大乗」で生きる大切さについて話し、「大願成就」と筆で記したお札を手渡してくれた。「自我」や「小願」を超え、「大願」に生きなさい、と。

ふいに私の右隣に先のローマ兵、左隣にはあの西欧人男性が現れた。そうしてなんと一緒に護摩祈祷に加わったではないか! 

意外な展開に自分でもなにか驚いてしまった。今思えば、一月ほど前に真言密教の僧の書かれた本を図書館から借りて読んだので、そのせいでそんなイメージを見たのかもしれないけれど…。

3回セッションをして、退行催眠は終了した。ワイス博士は「催眠」だったけど、Tさんの場合は「催眠」というより「誘導瞑想」って感じだった。グループ・セッションだったし、3時間で1回だけのワークショップだったから仕方ないのかもしれないけれど、もっとじっくりと深~い誘導を期待していたんだけどなぁ。

それでも皆さん、いろいろあったようで、興奮して自分の見たものを語ってくれた方もいた。

その中に中世のヨーロッパで女の子だった自分が見えたという女性がいた。8歳か9歳くらいの幼い少女だったにもかかわらず、村が兵士に襲われて、彼女もレイプされ、殺されたのが見えたのだそうで。殺される場面ははっきりとは見えなかったけれど、自分の前に立った大男に、首を刎ねられるような残虐な殺され方をした。その男が自分の現在の夫のような気がした、と。

その話に、「Very interesting!」とTさん。「実はあなたの夫もその話をしたのよ! 彼から聞いている? 彼は中世の戦士で、(現在の)妻の首を刎ねた自分を見たと言ったの!」

女性は、夫がTさんのセミナーに参加したことは聞いているけれど、その話は聞いていないと答え、Tさんはもちろん本人も私たちも驚愕したのだった。

ほんとかいな? ちょっとでき過ぎって気も…。それにしてもTさん、セラピストの守秘義務つーのはどうなっているのでしょうか?

それから、夫に石で殴り殺されたイスラム女性だった自分がありありと見えたと語った女性も。そのときの夫が今の母親だったと言う。

母親とうまくいっているか?とTさんが尋ねると、彼女は首を振り、母親とは長いこと話していない、と。

ほとんどの方がなんらかのビジョンを見ていた。それらが前世の記憶なのかどうかはわからないけれど。だけどどうしてその場所の、その時代の、そういう人物が見えたのか? という問いはやはり興味深いと思う。

たとえばイスラム女性の死の場面を見たと言っていた女性は金髪のオーストラリア生まれのオージーで、イスラム教徒ではなかった。どうして自分がそんなビジョンを見たのか、明らかに本人、戸惑っているようだったし。

ワイス博士に限らず退行催眠を扱う療法士の報告を読むと、それが前世の記憶かどうかはさておき、原因を思い出すと恐怖症が治る、そのことが重要なのだと指摘している。

療法士のTさんは、見えた「前世」をGoogleサーチして、背景を調べることを勧めていた。とりわけ戦死した兵士だった前世を思い出した場合、戦死者の記録は残っているので調べ易い、とか。

私の場合Googleサーチするほど細かい話は出て来なかったし、前世の記憶かどうかももちろんわからない。あ、それ私、確かにそういうことあった~、みたいな感覚もなかったし。^ ^ 

いずれにしてもこういう誘導瞑想の類で出てくるビジョンは、瞑想の最中なんかで自然に出てくるそれと比べると弱いと思った。でもTさんから過去世退行催眠の誘導CDを貰ったので、またそのうち時間を作って聞いてみようとも思っています。


2010/9/28
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