第142話

文字数 469文字

 外と内、ボールとストライク、逃げる球と食い込む球、そして速い球と遅い球。配球の基本はこの四つにある。

 里見の決め球はチェンジアップ、打ち気に逸っている者ほど効果がある。仙波の言葉を信じれば里見は恐らくデッドボールで指を痛めている。ストレートが弱っている。速球に弱いとされる寝かせたバット……きっと裏をかいて来る……そしてチェンジアップの基本は、
(外角!)
 望未は強振する。遅い球は読まれることに弱い。
『カッッッキィィィーン』
 打球は前進守備のライトの上を越して伸びる。
(入れ!)
 ホームランを期待しつつも全力で走る望未。長打は間違いない。歓声が沸く、ボールはフェンス直撃だった。二塁ランナーがホームへ帰る。クッションボールが塀の角に当たって予想外に大きくファールゾーンへ転がる。それを見て望未は俊足を飛ばして二塁を回る。
 サードコーチャーを見る。一瞬、コチャーボックスの先輩が迷ったように感じた。目が合う二人。
(ここで逆転する以外道はない!)
 アイコンタクトは合致した。三塁コーチャーはライトが捕球にもたついているのを確認して腕を回す。
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