第123話

文字数 530文字

 大将戦の勝負が決した。激しく息をする肩が、猛攻した米原の意地と根性、そして悔しさを物語っていた。
 喜び溢れる城西高校、崩れ落ちる白銀。ここに城西高校男子団体戦全国大会出場が決したのであった。
「未咲、ありがとう」
「良かったぁー」
「初全国だな颯来、ひひ」
「助かった、ホント助かったサンキューな未咲」
「やりましたね、全員の力っスよ」
 優勝を分かち合った五人、防具を片付けていると颯来は視線を感じる。ふと顔を上げてみると目が合ったのは米原。米原は颯来と目が合うと頭を下げる、慌てて颯来も会釈で返す。望未が言っていた敗者が勝者を称える最低限の礼儀なのかもしれない。
(そうだ、勝者が主役でなくてはならない。彼らの分まで胸を張ろう)
 そう思って顔を上げて戻した視線がぶつかったのは豊橋。豊橋は不敵な笑みを残して背を向けた。
「豊橋か。生意気な一年坊め。でも……勝ったのは俺たちだ」
 千城が颯来の視線に気付いて声を掛ける。
「あぁ……俺たち、だ」
「そしてついに颯来も全国デビューだな」
 武道館、試合会場を出る白銀高校を見届ける千城の横顔を眺めていた颯来は釈然としない。
(確かに全国大会には出れた。出れたけど……)
 その理由ははっきりしていた。
(やはり彦、お前を倒さなければ……)
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