第71話
文字数 640文字
グループごとの当番で行う掃除では、望未はいつも最後に焼却炉にゴミ箱の中身を出しに行く。大抵の場合、一人でこれを出して戻る頃には教室の掃除も終わっている。
(……何だ?)
引き戸を開いて中に入ると外を眺める一人の女生徒がいた。半開きの教室の扉の奥はすでに机が整頓されており、誰も残っていないかと油断していたせいで少しばかり驚いたが、ゴミ箱を定位置に戻す。
望未は何となく意識して、気付かれない様そっと自分の席から鞄を掴む。いつもなら簡単にできていることが、こういう時に限って鞄が当たって机が床を鳴らしてしまう。
「あ、ごめん」
何が『ごめん』なのか? 瞑想の邪魔でもしたかのように思わず詫びる。扉を開けた音にも望未の存在にも振り向かず、望未の声で我に返ったかの如く振り向く。
「来生君……」
振り向いた彼女は見慣れない顔だ。
「あ、えっと……」
「隣のクラスの山下です。知らないよね?」
「あ、ごめん……」
「いいの、いいの。これ読んでください」
封筒を渡される。
「あ……え?」
望未は良く分からないまま、思わず受け取る。
「本当は机に入れようと思ったんだけど、久美が直接渡した方がいいって……あ、久美は同じクラスの友達」
「はぁ……」
「じゃ、良かったら連絡してね」
そう言って足早に去って行く。望未は黙って見送る。呆然と立ち尽くしている望未の耳に入ってきた大きな声。
「久美ぃ、待った? ごめん、ごめん」
「終わった? じゃあ次、ハンバーガー食べに行こ」
「……」
望未は気が付いたように封筒を開ける。
(……何だ?)
引き戸を開いて中に入ると外を眺める一人の女生徒がいた。半開きの教室の扉の奥はすでに机が整頓されており、誰も残っていないかと油断していたせいで少しばかり驚いたが、ゴミ箱を定位置に戻す。
望未は何となく意識して、気付かれない様そっと自分の席から鞄を掴む。いつもなら簡単にできていることが、こういう時に限って鞄が当たって机が床を鳴らしてしまう。
「あ、ごめん」
何が『ごめん』なのか? 瞑想の邪魔でもしたかのように思わず詫びる。扉を開けた音にも望未の存在にも振り向かず、望未の声で我に返ったかの如く振り向く。
「来生君……」
振り向いた彼女は見慣れない顔だ。
「あ、えっと……」
「隣のクラスの山下です。知らないよね?」
「あ、ごめん……」
「いいの、いいの。これ読んでください」
封筒を渡される。
「あ……え?」
望未は良く分からないまま、思わず受け取る。
「本当は机に入れようと思ったんだけど、久美が直接渡した方がいいって……あ、久美は同じクラスの友達」
「はぁ……」
「じゃ、良かったら連絡してね」
そう言って足早に去って行く。望未は黙って見送る。呆然と立ち尽くしている望未の耳に入ってきた大きな声。
「久美ぃ、待った? ごめん、ごめん」
「終わった? じゃあ次、ハンバーガー食べに行こ」
「……」
望未は気が付いたように封筒を開ける。