第146話

文字数 483文字

 千城は間合いを無造作に詰めた、颯来に動揺が見られれば千城は攻撃してきただろう。颯来は千城のその意図を分かって、逆に千城が止まったところで誘いをかけた。千城が反応したら颯来も打って出るつもりだったが、千城も颯来に打つ気が無いのを読んでいた。

 再び剣先が触れ合う間合いに戻り、仕切り直す。千城の目が颯来を射抜く。
(目を逸らすな。呼吸を読まれるな。重心を悟られるな)
 颯来は千城の驚異的な能力の原点が、その目にあることを知っている。全てはその情報収集による予測から始まり、実行できる身体能力が千城武彦の強さの秘密である。


「集中すると、相手の呼吸で流れる空気みたいなものも見えるぜ」
 千城は常人では理解できないことを言っていた。
「目を見てると、次どこを見るか予測できる。目の周りの筋肉がそいつの感情を教えてくれる」
 テレビに出てくるメンタリスト、超能力者、占い師、教祖様その類のことを言う。
「袴の中の下半身を見るんだ。全ての動作は下半身のバランスで保たれている。俺くらいになると足の指をみればどうなってるか分かるけどな」
 袴の中はスッポンポンだ。とっておきの一振りがある。
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