第62話 てっきり

文字数 545文字

「颯来、お前の私服、すっげぇーダセーぞ」
「え? マジ?」
「他に持ってないのか?」
「……あんま持ってないな」
「って言うかいっつも同じ服着てね?」
 千城とのこの会話がきっかけだった。


「愉香、今度の土曜、出かけられるか?」
「どうしたの? 颯来がそんなこと言うなんて珍しい」
「ちょっと付き合って欲しいんだけど……」
「……何企んでんの?」
「何も企んじゃいねぇーよ、ちょっと……」
「ちょっと?」
「……服買いに行こうかと思って、さ」
「服? 誰の?」
「俺のに決まってんだろ……」
「颯来が? 服を?」
「何笑ってんだよ。あーもういいよ、言うんじゃなかった」
「ごめんごめん、颯来があんまり珍しいこと言うもんだから」
「ちぇっ。で、どうなんだよ、店、休めそうか?」
「うーん……、日曜なら……ダメ?」
「午後からでいいか?」
「うん、午後ならお客さん少ないから」
「じゃ、決まり」
「了解しました」
(服なら遥に見てもらえばいいのに)
 愉香は約束した後にそう思いもしたが、
(そっか、遥と出かける服を探すのね。颯来、いっつも同じ服ばっか着てるから)
 それなら遥には内緒にしておいた方が良さそうだ、そう気持ちを整理する。
(遥に選んでもらうの、恥ずかしいのかな? 私なら平気?)
 あれこれ思うこともあったが、出かけるのは楽しみだった。
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