第７０話　何なんだ

　四人には微妙な距離が生まれた。

「颯来、あんた遥に何したのよ？！」
　勢いで颯来に言ってしまったことを後悔している。颯来がそんな人間じゃないって、良く分かっているはずだったのに。颯来のあんな悲しい目を見たのはこれで二度目だった。

　愉香は遥を気に掛ける。また以前のように閉じこもらないか不安がよぎった。
　しかし遥は以前より、明るく積極的に、交友関係も行動範囲も広げた。愉香も望未も『無理している』と思ったが、そうではなかった。遥もいつまでも心配されている弱いままではいけないと、自ら離れた。
　そして愉香も望未もそれを理解した。

　颯来は……以前にも増して剣道に力を入れ、普通に生活しているつもりだった。変わらず笑い、ふざけ、食べて、寝た。
　しかし千城には、心ここにあらずな場面や、愉香との接点が減ったこと、ぎこちなさがあることを感じていた。
　千城も変わらず普通でいることを選んだ。

　望未はどうしたらいいか分からなかった。失恋したであろう遥は今、自分を必要としていない様に思われる。部活も遥と二人にだけなってしまった二年生マネージャーの平野といることが増え、帰路も時間が離れるようになった。
　考えても分からないから野球に打ち込んだ。

　そして年が明けた。