第18話

文字数 630文字

 二日後、登校した遥に愉香の制止もきかず颯来が近づく。
「遥ちゃんごめんね。辛いの分かるけど敢えて聞くよ。うっすらでも顔、見られた? 何か分かることないかな?」
「颯来!」
 愉香の落胆と苛立ちが入り混じる。動じず見守る颯来。
「…………うん」
 辛うじて遥が頷く。
 颯来と愉香は顔を見合わせる。遥は勇気を出した。自身が前に進むために。
「吉田、松下、悪い少し離れてもらっていいかな。ごめんな」
 望未は空気を察して遥の周囲から人払いをする。


「多分それ、この間の奴らかも」
 遥の説明から望未が推測する。
「よし、分かった。望未、お前はもう関わるな。試合頑張れよ」
「どうする気?」
 愉香が心配そうに颯来を見る。
「どうもしないよ。ちょっと頼んでくるだけだ」
 そう言って颯来は黙った。


◆◇◆◇


 その日の放課後、城山中は大騒ぎとなった。

「放せよ。おい、お前らちゃんと謝れ! おい!」
 三人がかりで先生に抑えられているのは颯来。その颯来の前にはうずくまる二人の男子生徒。
 騒ぎを聞きつけた愉香と遥が目にした光景だった。
「静かにしろ」
 そう先生に頭を押さえつけられた颯来の口から、一筋の血が流れるのが見えた。
 愉香は遥の目から涙が流れ出ているのに気付いた。
(ひょっとしたら遥、だいぶ見えるようになってきている?)


 颯来は以前にも増して、愉香がいなくても『誰かが遥を気に掛けている』ことを周知させるべく振舞った。遥の周りにいる人間にわざと声を掛けて、遥自身が周囲を把握できるようにも務めた。
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