第121話 全国への道

文字数 567文字

 千城の読み通りであった。豊橋は板谷に一本勝ちを収める。大将戦ではあるが、千城が二本勝ちしている分、大将戦が引き分けの場合、本数差で城西高校のアドバンテージがある。

「すまん……頼んだ」
「はい」
 颯来とすれ違う板谷。お互いの胴を叩き合う。思えば板谷は高校剣道、挫折の繰り返しであった。昨年は颯来と千城の新一年生にレギュラーを奪われ、後輩に舐められたくない一心で練習し、やっとつかんだレギュラー。そして今度は決勝戦まで来て一年生に敗れようとは。
 中学時代はそれなりに成績を残してきた、このままでは終われない、終わりたくない。
「未咲……全国大会に行かせてくれ」
 礼をする颯来に板谷の声が聞こえた。颯来のやる気に俄然火が付く。


 米原も厳しい稽古を積んできた。中学生の時から勝てなかった千城、そして新たに出会った才能、未咲、豊橋。高校三年、そいつらを全員倒すはずだった。
 インターハイ県予選決勝、そこには勝てない才能が存在した。

「一本勝ち」
 主審が白旗を上げて、二人は礼をする。
 一本勝ちだが、終始颯来は優勢だった。米原の連打は凄まじいものであった。颯来が連打で対抗しようものなら、たちまち飲み込まれてしまったであろう。
 しかし颯来は千城との勝負の末、自身の剣道を見出した。米原の連続打ちを捌くのは、千城のそれと比較すれば難しい事ではなかった。
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