第4話

文字数 627文字

「遠野遥、可愛いよな」
 授業と授業の間の休憩時間、颯来はその尻と片足を遠慮なく机に乗せながら望未に話しかける。
「……まぁ」
 いきなり過ぎて『とりあえず』的な生返事をしてしまう。
「ど真ん中ストレートに驚いてファールに持ち込むのがやっと、ってな感じの返事だな」
 颯来は望未の心を言い当てる。
「……」
 図星を突かれて苦笑いで返す。
「俺なんかとっくに振られてるけどな」
「え? そうなのか?」
「チェンジアップ、で空振りだな」
「……嘘か?」
「はい、当たり」
 颯来は指のピストルで望未を打つ。そのしぐさに望未は不機嫌そうにそっぽを向く。
「ま、まったくの嘘でもないよ。遠野遥にアプローチはしているんだけど……」
 相手にしないはずなのに、耳がそれを許さない。
「だけど?」
 オウム返しの望未への答えは視線で応じる。望未は颯来の視線の先を辿る。
「門前払い、って訳か」
「ご名答」
 颯来の視線のゴールは愉香だ。
「三球目はきちんと打ち返したな」
 颯来がそう言いながら机から降りると、授業開始のチャイムが鳴り、席へと戻って行く。
「……」
 返すコメントもなく見送る。恰好良い会話を意識している颯来をみて、これが中二病なのだと理解した望未。
 それとは別に、この年頃でこの手の話題はもっと重要で大切に扱うべき案件のはずが、授業間の短い休みにあっさり話していくドライなところ、そんな颯来に望未は好感を持った。

 太陽が温かい時期はあっという間で、もう段々暑さが気になるガラス越しの日差しだった。
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