第82話

文字数 572文字

 颯来はずっと考えていた。
(望未も愉香だって、俺と遥ちゃんが付き合っている、そう思っててくれてるに違いない)

(望未は遥ちゃんのことが好きだ、多分。遥ちゃんもきっと望未が好きだと思う)

(俺がはっきりさせないから、望未も遥ちゃんにも辛い思いをさせてしまっていた)
 これで望未と遥はきっとうまくいくだろう、うまくいって欲しい、そう願った。


 遥も遥と颯来がつき合っていると二人が思っているだろうと思っている。
 遥は愉香が颯来を好きだと思っている。颯来も多分愉香が好きなはず、そう感じていた。
 遥が颯来を想う気持ちに偽りはなかった。颯来は一番辛い時、遥を支えてきてくれた。颯来の想いに応えたい自分がいたのは確かなことであった。


 望未は遥と颯来が別れたのは、颯来が自分に遠慮したからだとも思ったし、颯来が愉香を好きだから、とも思った。望未には何が本当かは分からなかったし、颯来の、遥の、愉香の気持ちを知るのが怖かった。
 愉香が颯来のことを好きであろうことは感じていたが、それでもし遥が傷つくのであれば、どうすればよいのか分からなかった。

 誰もが口に出せないでいた。



 あの日遥は言った。
「ずっと好きって言ってくれてありがとう。颯来君が私を好きと言い続けてくれたから、私、挫けずに来れた。私も颯来君が好きでした。ありがとう」
 遥の目からは感謝の雫が溢れていた。
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