第130話 延長戦

文字数 712文字

「そろそろ気付かないと黄色? うーん赤信号だな」
「千城君……」
「そいつは『当て勘』が良いんだよ。読み合いでは颯来は勝てないな」
「どういうこと?」
「豊橋っていうのは、剣道の形よりも竹刀を打突部に当てることを最優先している。邪道だ、邪道だけれども現代剣道ではそれで良いとも言える」
「颯来は?」
「颯来は王道だ。豊橋は『危ない』と思わすことで相手の攻撃の選択肢と大胆さを削って行く、時間が経てば経つほど読み負ける」
「もう、延長戦よ」
「そう、並みのレベルならここまでもたなかっただろう。でもそれは豊橋にも言える。並みなら颯来の返しをここまで避けきれない。颯来……避けきれないような『返し技』を出さなけりゃ負けだぜ」
「千城君、颯来に教えてあげて」
「愉香ちゃん……いくら愉香ちゃんの頼みでもそりゃできないよ」
「何で……?」
「だってこれ個人戦。ライバルなのよね」
「でも……」
「愉香ちゃんあの時言ったろ? 颯来は剣道で一番になるって」
「……うん」
「あの時とは違う、団体戦全国優勝のために、一番を取るためには俺も颯来も剣道に集中しなくちゃいけなかったんだ。だからハッキリさせなきゃいけなかったんだ」
「……」
「女のケツに気を取られてたんじゃダメなんだ……」
「……へぇ……」



「知ってるよ、愉香ちゃんのお父さんの話。愉香ちゃんは待っている、一番になるのを……颯来を……」
「……」
「一番になれるか……愉香ちゃんに見合う男か……しっかりテストしてやる」
「千城君……」
「好敵手、恋敵役として、ドラマをしっかり盛り上げて見せるよ」
 千城の決め台詞と共に会場が湧く。
「延長戦、始まる……」
「負けちまえ、颯来。そしたら愉香ちゃんは誰ともつき合わない」
「……コラ」
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