第100話

文字数 447文字

「あ、愉香」
「はーい、颯来」
 颯来の声に振り返る。
「あ……」
「何? どうかした?」
「……ひぃ、ひ……」
「なによ人の顔見て、失礼しちゃうわね」
「……あ、いや……その……あ、昨日、晩飯ちゃんと喰ったか?」
「そりゃ、ちゃんと食べたわよ」
「あ、そうか。なら良いんだ」
「なにそれ?」
「ちゃんといっぱい食べることは良いことだ、うん」
「……?」
 そう言って立ち去る颯来を怪訝そうに見送る愉香。何気なく少しスカートをたくし上げ自分の太もも周りを確認してしまう。


(ンニャロー。変な感じになっちまったじゃねーか……彦の奴め)
 愉香の視線の圏外に出ると、すぐにやり切れない気持ちを無意味に動かす身体で発散させる。
(一体どうなってんだ? どうしたらいいんだ? 遥ちゃんなら何か知ってるかも……?)
 ふと名案のように思い浮かぶ。
(いや、聞けるわけないだろ……。望未? そうだ望未になら……ってなんて聞くんだよ、ぢぐじょー)


***


「来生ィー。先帰っていいかー?」
「おー、お疲れぇ、大師」
 望未は練習、練習に明け暮れていた。
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