第61話

文字数 545文字

 その五球目。
『キーン』
 彼方のバットは春原の球をとらえた。痛烈な打球は逆らわずにライト線に向かって切れながら飛ぶ。
 打たれた春原は勿論、望未も『バカな』と打球の行方を追う。
 長打になると思われたその打球は仙波のグラブに収まる。仙波のファインプレーがチームと春原を援護した。
 仙波の好プレーは春原の投球を盛り上げ、結果、更科高クリーンアップを三者凡退へ導いた。
 これで勢いに乗りたい大城学園であったが、九回最後の攻撃もすでに二死、再び打席は仙波。ここでも仙波が意地のセンター前ヒットを叩きだす。先程と違い今度はきれいに打ち返した。
 しかし反撃はここで終わり、大城学園は完封負けを喫す。

 大城学園一年、春原大師は、強力打線の更科高校を打者一巡、ファインプレーにも助けられ三回をパーフェクトに抑える快挙をやってのけた。里見に劣らない素質を示したのだった。

 最後の体育科三年主体のチーム、来年以降チーム力の低下は避けられない中、唯一の二年仙波が、いや仙波だけが里見から安打を放ったこと、そして春原が彼方を抑えこめる希望を、次のエースナンバーを背負う期待を、大城学園が勝ち進める可能性をみせた。望未は出番こそなかったが、次につながる収穫を感じた。

 その年更科高校は甲子園出場、ベスト8で姿を消した。
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