第44話

文字数 430文字

 古豪城西剣道部、部内試合の成績によってほぼ決まる団体戦メンバー、その一員に一年生が入ることは、その史上になかった。そんな快挙を今年は二人もやってのけたのである。

「今回、自分は団体戦に専念します」
 千城は顧問の先生にそう言って個人戦を辞退した。個人戦は一校につき六名までと出場枠が決まっており、城西高校では顧問が選出している。颯来は個人戦には選ばれなかった。
 高校にもなると、団体戦と個人戦の行われる日付は異なる。『専念』とは千城が言葉面を合わせただけである。

「俺に気を使ったつもりか?」
「まさか。団体戦の方が好きなんだよ、俺は」
 颯来が感動するとでも勘違いしたのであろうか、決め顔の千城。
「何、スカしてやがんだ、武! こら」
 竹刀で引っ叩く。
「何しやがんだ、コラ」
 やり返す千城。
「俺は個人戦出てーんだよ」
「何でだよ」
「倒したい奴が居るんだよ」
「どいつだよ」
 お互い叩く手を止めない。
「三堀って奴だよ」
 千城が避けて颯来の竹刀が空を切る。
「あー、三堀先輩ね」
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