第49話 勝敗
文字数 594文字
山場の副将戦。ここで勝った方が王手である。
『ドクン』
心臓が高鳴る。こんなことは今までなかった。個人戦主義だった颯来は『負け』は自分だけのものだった。
(そうだあの時、おれがパスボールなんてしなければ……)
何故だか中二の記憶がよぎる、望未の顔が浮かぶ。
(あれ? どうしたんだ、俺)
「始め」
主審の声で我に返る、立ち上がるのが一瞬米原に後れを取る。
『相当強い』そう千城に言わしめただけあって、颯来の遅れを見逃すはずはない。いきなりの怒涛の連打である。
(わわわ、やべ)
打ち返す暇もない、防戦一方である。
自陣から背中を押す声が届く。颯来はその声をしっかりと捉えている。
「余裕、余裕」
これは千城の声だ。味方の声でふと冷静になってみると、驚くべきは颯来が開始線から一歩も動かずその連打を受けていたことに気付く。
米原が小手―面と二段打ちにくるのが分かる。
「ニャロメ!」
颯来は小手打ちを竹刀鍔元で受け、面にくるところを狙って下から払い上げながら自身の竹刀を米原に打ち込む。
「メンだー」
旗が三本上がる。
「面有り」
(ありゃ?)
一本取れちゃった、そんな感じの颯来。二本目が始まる。
開始と共に米原の猛攻が颯来を襲う。今度は颯来も落ち着いてそれを剣先で捌く。先程のように体の近くで相手の攻撃を『受ける』のではなく、『受け流す』状態だ。距離がある分余裕が生まれる。颯来には米原の動きが見えていた。
『ドクン』
心臓が高鳴る。こんなことは今までなかった。個人戦主義だった颯来は『負け』は自分だけのものだった。
(そうだあの時、おれがパスボールなんてしなければ……)
何故だか中二の記憶がよぎる、望未の顔が浮かぶ。
(あれ? どうしたんだ、俺)
「始め」
主審の声で我に返る、立ち上がるのが一瞬米原に後れを取る。
『相当強い』そう千城に言わしめただけあって、颯来の遅れを見逃すはずはない。いきなりの怒涛の連打である。
(わわわ、やべ)
打ち返す暇もない、防戦一方である。
自陣から背中を押す声が届く。颯来はその声をしっかりと捉えている。
「余裕、余裕」
これは千城の声だ。味方の声でふと冷静になってみると、驚くべきは颯来が開始線から一歩も動かずその連打を受けていたことに気付く。
米原が小手―面と二段打ちにくるのが分かる。
「ニャロメ!」
颯来は小手打ちを竹刀鍔元で受け、面にくるところを狙って下から払い上げながら自身の竹刀を米原に打ち込む。
「メンだー」
旗が三本上がる。
「面有り」
(ありゃ?)
一本取れちゃった、そんな感じの颯来。二本目が始まる。
開始と共に米原の猛攻が颯来を襲う。今度は颯来も落ち着いてそれを剣先で捌く。先程のように体の近くで相手の攻撃を『受ける』のではなく、『受け流す』状態だ。距離がある分余裕が生まれる。颯来には米原の動きが見えていた。