第55話

文字数 501文字

「あのー、混ぜてください」
「あ、悪ぃ、コイツ、千城武彦。武って呼んでくれ……いや彦に決めたんだ……っけ?」
「こんにちは。武君」
 遥が挨拶する、望未は軽く頭を下げる。それを見て千城は望未に声を掛ける。
「パフェ、奢ってあげた?」
「……やっぱり。あの時の」
「何、千城君、望未君と知り合いだったの? 何? パフェって」
「あーあー、何でもない、何でもない、こら武、いや彦」
「……あ、分かった望未君、あのカフェ、颯来君と行ったことあるんだ」

「フーン」
 それぞれのやり取りを見て、千城はうっすらと笑みを浮かべて再び望未に目をやる。
「……んだよ」
「……別にぃ」
 千城の笑みは鼻でしたような嫌みを含ませる。望未は何か見透かされたようで逸らす。
「颯来、試合は?」
「ん? あー負けた」
「……そっか」
「望未君、颯来が試合って何で分かったの?」
「剣道の臭いがする」
「へー、すごいなぁ、分かるんだ。俺ら涙で鼻が詰まってるから」
 千城は大げさに感心してみせる。颯来は愉香に無理やり臭いを嗅がせようとしている。
「こら、止めろ、近寄るな」
「遥ちゃんもどう?」
「私は平気よ」
 遥はどこから出したのか、洗濯ばさみで鼻をつまんでいる。
「……」
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