第65話

文字数 445文字

「あー疲れた……」
「良かったね、颯来。いいの買えて」
「疲れたけど……助かったよ、サンキュー」
「で? 今日のお礼は何をご馳走してくれるのかな?」
「何とかって、流行りのジュースみたいのあったろ、それでどうだ?」
「えーそれだけー?」
「じゃ……これ」
 颯来は紙袋を差し出す。
「何? これ?開けていいの?」
「ま、ほんの気持ち」
「わっ! ハンドクリーム……これさっき見た話題になってる……」
「たけぇーよ、なんでハンドクリームがこんなに高いんだよ……おかげでスッカラカン」
 颯来は照れ隠しで大袈裟にしてみせる。
「……じゃあ……勘弁してあげるか」
「ニャロ」
「ありがと……」
「お、お前の手見てると……なんつーか、手が可哀そうになるんだよ」
 わざとそんな風な言い方をしているのが誰が見ても分かる。愉香の手は家事とパン屋の仕事で同級生の手より少し疲れている。
「……ありがと」
 重ねる言葉と愉香の目が颯来の言葉を詰まらせる。
「あ……ら、来月お礼もかねて、プ、プレゼント渡すよ、二七日に」
 来月二七は愉香の誕生日だ。
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