第5話 新記録

文字数 559文字

 体育祭の種目をクラスでエントリーするにあたって、その指標となるのが噂も含むこれまでの個人実績と、毎年四月に行われる体力測定である。
 颯来の体格や雰囲気、そして運動部であることなども考えるとクラスの期待値は高い。
 望未も体格はやや颯来に劣るものの『できそう』な感じがする。二年C組を、いや二学年全体を見ても運動能力が高そうな二人であった。


 望未からは口には出さない闘志が伝わってくるが、颯来にも勿論、自信がある。体力測定ではお互いの火花が飛び交う。
 短距離は望未が6.1秒という校内新記録を出せば、持久力では颯来が圧倒的な力を見せつける。
 瞬発力はほぼ互角、握力では右手は拮抗していたが、利き腕ではない左でも50㎏を超えて颯来がそのパワーの違いを見せつける。そうかと思えば柔軟性で望未がそのしなやかさを発揮する。
 高校生レベルの結果で伯仲していると思われた実力は、思わぬところで差が付いた。
 遠投である。ハンドボールで40メートル超えの強肩を披露したのは野球部の望未。颯来は30メートル以上ではあったが、何より周囲の度肝を抜いたのは、その投げ方である。
 何て言うのかスポーツマンらしからぬ体の使い方、とにかく『砲丸投げ』に近いその投げ方で30メートル放るパワーは驚きであった。しかし颯来はその格と期待値を大きく下げた。
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