第50話

文字数 653文字

 米原は焦っていたのかもしれない、剣道における連続打ちは相手が防ぐに必死の状態にさせなければその意味をなさない。相手に余裕を持たれている場合、それは連打ではなく、ただの乱打である。
 剣道は自身が動くその時が一番打たれやすい、攻めているようでその実、米原はピンチの連続といって良い。米原ほどの実力者がそれを知らないはずがない、つまりは米原は焦っていたと言えよう。

 颯来は米原の打ち込みの中の面打ちの一つを選んで、その竹刀を逆らわずに下へ叩き落す、そのままがら空きになった面に竹刀を叩き込む。

「勝負あり」
 互いに礼をし、引きあげる。続いて大将戦が始まる。しかしチームの勝敗は決した。颯来が二本勝ちしたことで、城西は例え大将が二本負けしても、二勝同士だが取った本数は四本対三本で本数勝ちとなる。
 結局、千城と颯来の一年生コンビで勝負を決めたことになる。
「バラパイセン、強くねぇーじゃねぇか」
「何だ? ビビってたのか?」
「カマかけやがって」
「違うよ、颯来。お前が強くなったんだ」
 千城は颯来が米原に圧勝することが分かっていたように笑った。


 大将戦は城西の一本負けであった。流石は三堀と言うべきなのだろうが、この大将宮崎の負けはチームに大きく影響した。
 三年は二人揃って負け、上級生たちは誰も勝てなかったという事実である。思いの外、これが後を引く。
 対明正商業の決勝戦、千城と颯来以外勝てず、先鋒引き分け、次鋒二本負け、中堅二本勝ち、副将一本勝ちで迎えた大将戦、宮崎は二本負けを喫してしまう。チーム本数負けであった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み