第126話

文字数 541文字

 更科は三回、一番香取がショートへの内野安打で出塁する。香取は盗塁を試みるが望未がスタートを切らせない見事な牽制で一塁釘付けにすると、後続をしっかり打ち取って無得点。
 四回、先頭打者として再び彼方が打席に入る。
「マシになって来たみたいだな」
「お手柔らかに……お願いしますよ」
 今度は膝元の速球を難なく弾き返す。レフトフェンス直撃のツーベースヒットである。
 続く里見にセカンドのグラブを弾く強襲ヒットを打たれ、一、三塁のピンチを再び迎える。
 しかし、チェンジの度に行われるデモンストレーションのような二塁への送球と、捕球した瞬間、左足を出すことでしっかりとランナーを牽制、ランナーに望未の強肩を植え付ける。
 そしてランナーを無視したかのようなチェンジアップを交えた大胆なリードと、春原の好投で三者三振に切って落とす。

 しり上がりに調子を上げてきた春原のピッチングは五回以降、一つのフォアボールと三つのエラーにより出塁を許したものの、六回、八回と彼方の二回の打席を打ち取ってみせたのだった。
 それ以上に驚くべきは里見の快投、一人の走者も出さないパーフェクトピッチング。男の価値は、バッテリーの強さは、見た目では計り知れないという気迫を感じる。
 0対0のまま九回裏二死、春原が打席に入る。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み