第74話

文字数 492文字

 愉香とは小学校の学区は違ったが、愉香の父は颯来の家の近くの剣友会の先生の一人でもあった。颯来は愉香の父に救われた、そして空手を辞め、剣道を始めた。
「颯来、素質あるよ。一番になれる」
 メキメキと上達する颯来を明音は良く褒めた。
「剣豪、宮本武蔵は常に勝利する準備ができていた、だから『戦う前からすでに勝ちがみえている』し、それ故『戦う必要もない』そうだ。颯来、本当に強いものはケンカなんてしないんだ」
 颯来は、明音先生を慕い、明音は颯来をかわいがった。颯来の四つ上の姉もかわいがった。明音は颯来の姉をパン屋の手伝いに誘い、教えた。おかげで颯来の姉は現在、障害者らが働くパン屋に勤めている。
 その明音は、颯来が六年生になった春に他界してしまう。出会ってわずか二年足らずだった。

 颯来は剣道で一番になる事を誓った。


***


(中二か……ケンカ、またしちゃったもんな……。この話をしたのって、いつだっけ? そうだ、望未が俺を野球部にしつこく誘うからそん時に話したな)



「しつこいな、野球はあれ一回だけ」
「颯来なら良いキャッチャーになれるよ」
「……望未は何で野球やってんだ?」
「……俺か? 俺は……」
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