第35話

文字数 341文字

 颯来を待つ愉香。カップルに見えなくもない。並んで歩きだす。
「誰? あのカッコいい人」
「……好みなのか?」
「うーん、剣道っていうのがねぇ」
「剣道、ダメか?」
「強いんでしょ? 彼」
「何でそう思う?」
「颯来の雰囲気かな?」
「ま、憎っくきライバル、だな」
「……だからよ」
「何が?」
「……さぁ?」
 そう言って少し前に行きだした愉香の歩は早足だ。


「あ、遥、望未くーん」
 愉香が大きく手を振る。


「明日から授業開始……いやだな」
 深くため息をつくのは颯来。
「いよいよ高校生活も本格スタートだ」
「多分、こうして四人で会うのも難しくなるよね」
「どうせ颯来と遥はちょくちょく会うんでしょうけど、ね」
 愉香の言葉に寂しさを感じたのか、誰も反応しないこの場を取り繕うように遥が微かに笑みを見せただけだった。
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